― GNPS2026サイドイベント開催報告
2026年7月15日、熊本で開催されたGlobal Nature Positive Summit 2026(GNPS2026)の公式サイドイベントとして、ROOTsは「メディア・企業広報・教育から考える、信頼されるネイチャーポジティブ・コミュニケーション」を開催しました。
私たちは、自然や生きものと野外で直接出会うだけでなく、テレビやSNSなど、画面を通して出会う機会も多くあります。そこで得た情報は、自然への関心や感情を生み、その後の行動や社会の意思決定にも影響します。
では、自然への関心を「見て終わり」にせず、その先の学びや行動へどうつなげるのか。人の心を動かす表現と、生きものや生態系への配慮をどう両立するのか。テレビ東京の進藤隆富氏、CLASS EARTHの高岸遥氏、電通の澤井有香氏を迎え、それぞれの実践から考えました。
3者の実践から見えたこと
テレビ東京の進藤氏からは、番組で自然環境の課題を伝えるだけでなく、企業との勉強会や子ども向けワークショップ、海や森での保全活動までをつなぐ「テレ東 ウミモリ活動」が紹介されました。番組で知り、実際に触れ、活動に参加し、その様子を再びメディアが届ける。情報発信とアクションを循環させることが、メディアだからこそできる役割として示されました。
CLASS EARTHの高岸氏からは、絵本、アニメ、動物園・水族館で利用する体験型アプリなどを通じ、子どもたちの「面白い」「知りたい」を学びや行動につなげる実践が紹介されました。大切にしているのは、すべてを教えるのではなく、「なぜだろう」という問いを持ち帰ってもらうこと。生物多様性を危機や義務だけでなく、「憧れの対象」として伝え、その先の学びにつなげるという視点です。
電通の澤井氏からは、生活者調査と企業支援の実践をもとに、「企業広報・広告は、ネイチャーポジティブをどう行動につなげるか」が共有されました。「生物多様性」の認知度は高い一方、その危機を自分との関係として捉え、行動につなげるには大きな隔たりがあります。企業の取り組みも、ステートメントを掲げるだけでなく、事業や生活者の行動へつなげる段階へ進みつつあります。ネイチャーポジティブを自然だけの「ポジティブ」にとどめず、人の経験、企業活動、地域や社会の価値にもつなげることが、共感と継続性を生むとの視点が示されました。
「どう伝えるか」をめぐる7つの論点
後半のパネルディスカッションでは、3者の実践をもとに、発信の現場が直面する課題を掘り下げました。
1.「見て終わり」にしないために、接点と問いを増やす
テレビ、商品、学校、動物園・水族館、自然体験など複数の接点をつくり、関心を学びや行動へどうつなげるか。
2.事実だけでなく、受け取られ方まで考える
事実が正しくても、外来種などを「悪者」として印象づけることがあります。正確性だけでなく、どのような認識を生むかまで考える必要があります。
3.子どもに伝えるとき、何を削り、何を残すのか
情報を単純に減らすのではなく、問いを残し、別の媒体や体験で背景を補う。擬人化についても、本来の生態を損なわない工夫が求められます。
4.ネイチャーウォッシュを避ける鍵は「説明できること」
企業が自然の写真や言葉を使う際、「なぜその表現を使うのか」「事業とどう関係するのか」を説明できることが重要です。
5.ナラティブが、現実を都合よく変えてしまわないために
物語は人を引きつける一方、現実を予定したストーリーに当てはめる危険もあります。確認できた事実から物語をつくる姿勢が必要です。
6.取材対象の言葉を、こちらの思惑でつながない
限られた時間や文字数でも、発言を発信者側の意図に合わせて編集せず、想定と異なる事実が得られれば伝え方自体を見直すことが重要です。
7.語られやすい生きものと、語られにくい生きもの
哺乳類など注目されやすい生きものがいる一方、昆虫、植物、菌類などは重要でも語られにくい。発信の偏りが、社会の関心や保全にも影響する可能性があります。
最後に
今回のイベントを通して、メディアだけでなく、保全団体や動物園・水族館の関係者も、自らの発信やメディア対応について多くの悩みを抱えていることが分かりました。これらの団体も、来園者、支援者、地域、企業、メディアなどに情報を届ける重要な発信主体です。
今後ROOTsは、メディアや企業だけでなく、保全団体、動物園・水族館、研究者などとも、自然や生きものの伝え方について学び、対話し、実践を積み重ねる場をつくっていきます。発信の力を、人と生きもの、自然にとって、より良い意思決定につなげていきたいと思います。
一般社団法人ROOTs
長倉 綾子





















