― Nature Positive Communication 推進ステートメント
2026年7月、Global Nature Positive Summit 2026の公式サイドイベントにおいて、ROOTsは「Nature Positive Communication 推進ステートメント」を発表しました。
テレビ、広告、教育、商品・サービスなど、日々多くの人に情報を届ける企業・団体が初期賛同者として参加し、自然や生きものについて発信するときに共有したい考え方を示したものです。
自然への関心は、その先でどこへ向かうのか
このステートメントの出発点にあるのは、自然や生きものを「どう伝えるか」も、ネイチャーポジティブを左右するという問題意識です。
私たちは野外だけで自然や生きものに出会うわけではありません。テレビ番組、SNS、広告、企業広報、教育コンテンツ、商品、動物園・水族館など、日常のさまざまな場所で、その存在や暮らしについて知っています。
そこで生まれる「かわいい」「珍しい」「怖い」「守りたい」といった感情は、自然をもっと知ろうとすることや、観察、寄付、保全活動への参加などにつながる可能性があります。
一方で、「かわいい」「飼ってみたい」という気持ちが野生動物への需要を高めたり、「怖い」「危険」という印象が特定の動物への偏見を強めたりすることもあります。情報そのものが間違っていなくても、切り取られ方や文脈によって、発信者が予期しなかった社会的な影響が生まれることがあります。
だからこそ、自然への関心を高めることだけを目的とするのではなく、生まれた関心がその先でどこへ向かうのかまで見据えて発信することが必要だと考えています。
今回のステートメントでは、そのための共通の視点として、「発信の影響を認識する」「正確で誤解を招かない発信を行う」「生きものと生態系への配慮を組み込む」「発信を学びと行動につなげる」「発信の先にある変化を見据え、継続的に改善する」という5つを掲げました。
これは表現を一律に制限したり、「正しい伝え方」を決めたりするためのものではありません。異なる立場の発信者が、自らの発信とその影響について一度立ち止まって考え、学び、対話し、改善していくための共通の出発点です。
問題提起から、発信する側との協働へ
今回、もう一つ大きな意味があったと感じているのが、ステートメントに参加する主体の変化です。
ROOTsが2024年に野生生物の情報発信に関するステートメントを発表した際には、主に自然保護などに取り組む非営利団体が賛同し、「自然や生きものの伝え方を見直す必要がある」と社会へ問題提起しました。
それから約2年。今回のステートメントでは、テレビ、広告、教育、商品・サービスなど、実際に社会へ情報を届ける側の企業・団体が、初期段階から参加しています。
これは、単に賛同者が増えたということではありません。
これまで自然保護の側から「このように伝えてほしい」と働きかけることが多かった課題について、発信する側もまた、自分たちの仕事が自然や生きもの、人々の認識にどのような影響を与えるのかを考え、ともによりよい方法を探ろうとしている。その変化に大きな可能性を感じています。
ネイチャーポジティブを実現するには、保全活動だけでなく、企業活動、政策、教育、研究、消費など、多くの意思決定が変わっていく必要があります。そして、その意思決定の手前には、人々が何を知り、何に関心を持ち、何を大切だと考えるのかを形づくる「情報環境」があります。
コミュニケーションを、ネイチャーポジティブな取り組みを社会へ「伝える最後の工程」ではなく、人々と自然との関係をつくる入口として捉えること。
今回のステートメントを完成した答えとするのではなく、多様な発信主体と実践や課題を持ち寄りながら、よりよい自然との関係につながるコミュニケーションをともに育てていきたいと考えています。
一般社団法人ROOTs
安家叶子





















