日本・熊本 ── 2026年7月15日

本日、日本・熊本市において第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットが閉幕し、参加組織の合意のもとで「熊本宣言」が採択された。同宣言は、生物多様性の損失を食い止め、回復へと反転させるというネイチャーポジティブな目標に向け、とりわけビジネスや金融を含むあらゆる分野での変革を加速させる緊急性を強調している。さらに、世界共通の約束である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の実施と達成をより強固なものにするための共同の決意を表明した。

サミットには世界各国のリーダーや代表者ら2,725名が一堂に会した。その顔ぶれは政府代表や国際機関、市民社会、学術界、メディアなど多岐にわたり、中でもビジネスおよび金融セクターからの参加者が全体の3分の2を占めた。参画した産業分野も金融、保険、農業、エネルギーから、食品、ヘルスケア、建設、運輸にいたるまで多岐にわたった。

このように多様かつ多数の参加者が集まったことは、ネイチャーポジティブがもたらす社会的・経済的な大義と妥当性への認識が急速に高まっていることを示している。同時に、企業の行動を世界共通の生物多様性目標と整合させ、資金を動員し、自然だけでなく人々にも豊かな実りをもたらすようなネイチャーポジティブへの移行が、一刻を争う課題であることを浮き彫りにした。

全体会議や分科会は、ネイチャーポジティブな社会と経済を構築するために必要な、世界的な目標と具体的なアクションの双方を深く議論する極めて重要な機会となった。複数のセッションにおいて、ネイチャーポジティブな成果を測定し推進するための科学的根拠に基づいた一貫性のあるアプローチの重要性や、各種の基準、報告・情報開示フレームワーク間における相互運用性の確立に焦点が当てられた。

ネイチャーポジティブな未来に向けた熊本の志を示す「熊本宣言」は、80以上の組織(その半数は民間企業)によって署名され、世界の目標を測定可能な現場のアクションへと変換するというサミット参加者の固い誓いを表している。10月にアルメニアのエレバンで開催される国連生物多様性条約COP17を控え、196の政府代表が2030年目標や行動ターゲットに向けた進捗を評価する本年は、生物多様性にとって極めて重要な年に当たる。

ネイチャーポジティブな未来を達成するため、熊本宣言は、企業の環境への影響や依存度、さらには自然の状態を測定するため、科学的根拠に基づきつつも実務的で意思決定に直結する標準化された評価指標および測定手法のもとに、政府、規制当局、企業、金融機関が一丸となって行動を起こす重要性を強調している。また、生物多様性世界枠組のターゲット15で求められている通り、自然関連の課題に関する評価、目標設定、移行計画、および企業報告について、世界的に一貫した基準に基づくアプローチに向けて市場全体の整合を図ることを強く呼びかけている。

本サミットは、高円宮妃殿下のご臨席の栄を賜るとともに、ネイチャーポジティブ・イニシアティブ(以下NPI)および国際自然保護連合(IUCN)日本委員会の主催、ならびに日本政府の3つの省(環境省、農林水産省、国土交通省)の共催のもと、日経BPを運営事務局として開催された。

本サミットのプログラムには、元ユニリーバCEOのポール・ポルマン氏、王子ホールディングス株式会社の磯野裕之代表取締役社長執行役員CEO、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社取締役社長グループCEO舩曵真一郎氏、日本郵船株式会社の筒井裕子常務執行役員、ブラジルのヴァーレ社でサステナビリティ担当エグゼクティブヴァイスプレジデントを務めるグラジエレ・パレンチ氏、国際サステナビリティ基準審議会理事の小森博司氏、自然関連財務情報開示タスクフォースCEOのトニー・ゴールドナー氏、中国のアジアインフラ投資銀行で経済学者を務めるジンユー・ガオ氏、国連生物多様性条約事務局長のアストリッド・ショーメーカー氏、国連生物多様性条約COP17議長国特別使節のムヘル・マルガリャン大使など、国内外の経済界や社会のあらゆる分野から第一線で活躍するリーダーたちが登壇した。さらに、国連事務総長海洋担当特使のピーター・トムソン氏、世界経済フォーラム共同議長のアンドレ・ホフマン氏、アジア開発銀行で自然・環境局長を務める渡邊洋子氏、および今後開催される生物多様性COP17と気候変動COP31のホスト国であるアルメニアとオーストラリアの環境大臣によるビデオメッセージも寄せられた。

また本日、短編映画『Becoming Nature Positive』のグローバル配信が開始され、YouTubeWaterBearにて、どなたでも無料で視聴可能となる。なお、screening toolkitを利用することで、各組織において引き続き自主的な上映イベントを開催することが可能である。

水資源と生態系の統合的な保全と管理において長い歴史を持つ熊本で開催された本サミットは、政府、企業、金融機関、および地域コミュニティが協調することで、生物多様性、気候、そして人々に対して、いかに豊かな実りをもたらすことができるかを示した。会期中、生物多様性分野の革新的な技術を展示するNATURE TECH!フォーラムや、地元の高校生が参画する熊本市主催のユース・シンポジウムが並行して開催された。また、サミット初日には地元の小中学生247名がオープニングセレモニーに参加した。

NPIおよびパートナー組織は、熊本宣言の成果を目に見える具体的な行動へと移すため、今後も企業、金融機関、政府、市民社会との協働を継続していく。この取り組みには、2026年後半に予定されている自然の状態評価指標フレームワークの発表、ならびに科学的アプローチに基づく評価、目標設定、移行計画、情報開示へのさらなる整合の推進が含まれる。同時に、自然と人々に対して測定可能な成果をもたらすための協調や連携を促進していく。

生物多様性の損失を食い止め、回復へと反転させるという生物多様性世界枠組の2030年目標の達成まで、残された時間はわずか4年である。熊本から発せられたメッセージは明確であり、私たちには、必要な知識、パートナーシップ、そして解決に向けた様々な手法が着実に整いつつある。今、最も優先されるべきは、高い志と誠実さ、そして危機感をも持って、2030年とその先を見据えた社会実装の規模を拡大し、加速することである。それによって、世界をネイチャーポジティブな未来に向けた確実な軌道へと乗せなければならない。

本サミットは、インド アーンドラ・プラデーシュ州首相のN・チャンドラバブ・ナイドゥ氏によるメッセージで幕を閉じた。その中でナイドゥ氏は、2027年10月に「陸から海へ:グリーンおよびブルーのネイチャーポジティブな食料システムの加速」をテーマに、第3回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットを主催することを表明した。

【関係者コメント】

■ 環境大臣 石原宏高氏のコメント

「第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026が、ここ日本の熊本において開催されたことを心より歓迎いたします。生物多様性の損失を食い止め、回復へと反転させることは、私たちの社会や生計、ひいては人間のウェルビーイングの根幹である自然の恵みを享受し続けるために不可欠です。国際社会はネイチャーポジティブな世界の実現に向けて共通の目標を掲げました。多くの経済活動が自然資本に依存しており、ネイチャーポジティブに対する企業の意識も向上し続けています。現在、日本はTNFDアダプターで世界最多を誇っています。この生物多様性に関する国際会議が日本で開催されたことに、深い感慨を覚えるとともに、大きな期待を寄せています。本サミットが、ネイチャーポジティブな世界の実現に向けた国際的な取り組みをさらに加速させる、大きな契機となることを願っております。」

■ 国連生物多様性条約(CBD)事務局長 アストリッド・ショーメーカー氏のコメント

「生物多様性は、私たちの経済を支える最も重要なインフラであり、必要不可欠な存在です。この認識は近年急速に世界中で広まりました。特に、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組以降、その傾向は顕著です。健全な生態系が強靭な経済の基盤となり、生態系サービスを通じて産業や社会を支えていることは、数多くの科学的根拠が示しています。食料生産や安全な水の供給から、気候変動への適応、災害からの防護、そして人々のウェルビーイングに至るまで、その恩恵は計り知れません。本サミットのタイトルにも掲げられているネイチャーポジティブは、決して単なるスローガンではありません。それは、『自然の状態(state of nature)』といった指標に裏打ちされた、測定可能な概念です。この指標は、あらゆる主体が生物多様性の損失を食い止め、回復軌道へと反転させるための行動を追跡し、強化していく一助となるものです。」

■ ネイチャーポジティブ・イニシアティブ主宰 マルコ・ランベルティーニ氏のコメント

「自然は、私たちの経済や社会、そして未来の根幹です。この熊本サミットは、ビジネスや金融界の代表者がこれほど多く、かつ参加者の過半数を占めるという、民間セクターがかつてない主役となった、自然をテーマとする世界最大級の国際会議となりました。これは、民間セクターが自然の損失を自社の重要な財務リスク、すなわちマテリアリティとして捉え、一方で、自然の保全や持続可能な資源利用を、ビジネスの強靭性を高めて新たな価値を創造する機会であると認識しつつある、明確な兆候です。私たちが熊本で目の当たりにしたのは、単なる公約の段階を超えて具体的な社会実装へと移行するという、強い決意の広がりです。この勝負の10年は、まさにそれに見合うペースと規模での実行を私たちに求めているのです。」

■ 国際自然保護連合日本委員会会長 道家哲平氏のコメント

「本サミットにおいて、何より力強く感じられたのは、企業やNGOをはじめ、地方自治体、研究者、ユースといった日本の多様な関係者が、セッションやサイドイベント、展示、そして数え切れないほどの交流を通じて示してくれた、素晴らしい尽力でした。そして、多様な主体が自ら主導し、さらなる連携を通じて、日本全国でどれほど数多くの取り組みがすでに動き出しているかを、改めて実感する機会となりました。日本は、人と自然との長年にわたる深い関わりの中で育まれ、維持されてきた里山などの二次的自然の価値という、世界的なネイチャーポジティブ運動に欠かせない重要な視点を提供しています。熊本で共有された経験が世界的な対話に貢献し、ここで生まれた繋がりが、新たなパートナーシップの構築や、さらなる行動の加速へと結びつくことを心より願っております。」

■ 日経BP 代表取締役社長 CEO 井口哲也氏のコメント

(日経BPは、グローバル・ネイチャーポジティブサミット2026/サミットマネージャー)

「メディア・情報サービス企業として、私たちは社会・経済の持続可能性に関する情報発信を最優先しつつ、自社の事業活動を通じた環境・社会責任の履行に努めてきました。熊本宣言が示す通り、ネイチャーポジティブな社会への移行は、単なるコストではなく、持続可能な成長とレジリエンス、イノベーション、そして長期的な価値創造を牽引する『投資』と捉えるべきです。私たちはこの理念に深く賛同し、情報提供者という立場から、生物多様性の保全と再生に向けた社会全体の取り組みに貢献するため、本宣言への署名を決定いたしました。」

■ サステナブルビジネスリーダー、投資家、慈善活動家 ポール・ポルマン氏のコメント

「自然は贅沢品でも、単なる環境問題でもありません。自然とは、あらゆる経済が依存する、いわばインフラです。資本市場に依存するよりも先に、企業は健全な土壌、清浄な水、花粉媒介者、森林、海洋、そして安定した気候に依存しています。自然なしには経済は成り立ちません。私たちはあまりにも長い間、自然は無料かつ無尽蔵で、誰か他の人の責任であるかのように振る舞ってきました。しかし、事実は全く異なります。実際、自然を無料のものとして扱うことは、歴史上最大の市場の失敗となりました。この失敗を正すことは、私たちの世代における最大の事業機会です。自然は今や、企業の責任における周辺的な課題ではありません。ビジネスのレジリエンス、競争力、そして長期的な価値創造の中核そのものです。すべての投資決定、資本配分、サプライチェーン戦略、そして取締役会における議論において、私たちは自然の価値を不可欠な経営要素として位置づけなければなりません。」

■ インド アーンドラ・プラデーシュ州首相 N・チャンドラバブ・ナイドゥ氏のコメント

「インドのアーンドラ・プラデーシュ州は、NPIおよびGASPと連携し、2027年のネイチャーポジティブ・サミットを主催できることを光栄に思います。1000kmに及ぶ海岸線、豊かな農業の歴史、多様な生態系、そして自然と深く結びついた何百万もの人々のコミュニティを有する私たちは、世界を結集させ、『陸から海へ:グリーンおよびブルーのネイチャーポジティブな食料システムの加速』という新たな道筋を世界に示す所存です。自然の保護と経済的な繁栄は、決して相反する目標ではなく、人類が共に手にするべき好機であることを、共に証明しましょう。」

【報道関係問い合わせ先】
・ネイチャーポジティブ・イニシアティブ ジェマ・パークス ── gparkes@naturepositive.org
・日経BP 公文紫都 ── gnps2026-press@nikkeibp.co.jp
・IUCN日本委員会 ── mail@iucn.jp