生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)の前後には、自然の現状や取組の進捗を評価する報告書、企業や金融機関の行動を支えるツール、自然保護への資金や協働を広げるイニシアティブが相次いで発表されました。交渉による決定とは別に、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実施を支える動きとして、主なものを紹介します。

以下の「発表日」は、会期中に主要なローンチ・紹介イベントが行われた場合、その日を採用しています。ウェブでの公開日が異なる場合は補足しました。日付はいずれも2026年、イベント日は現地日付です。

COP17に先立つ発表

1.WWF「Living Planet Report 2026(生きている地球レポート)」†

発表日:10月8日(提供資料に記載された日。会期中の主要紹介イベント日は未確認)
発表主体:WWF
名称:Living Planet Report 2026

野生生物の個体群の動向などを通じて、地球の自然の状態を伝える報告書。提供資料では、自然の減少と保全による回復事例を示し、食料・エネルギー・金融システムの転換を求める発表として紹介されています。減少率や集計期間の数値は、2026年版の原文確認後に追記します。

関連リンク:WWF公式サイト

2.NPI「State of Nature」の指標・測定枠組み†

発表日:10月13日(提供資料に記載された公開日。会期中のローンチ日は未確認)
発表主体:Nature Positive Initiative(NPI)
名称:State of Nature Indicators and Metrics

自然の状態とその変化を測るための共通指標・測定枠組み。企業などの取組が、実際に自然の維持・回復につながっているかを把握する基盤として位置づけられています。測定ガイダンスと技術報告書も公開されています。

関連リンク:NPI公式サイト

3.TNFD「LEAPガイダンス」第2版†

発表日:10月13日(提供資料に記載された公開日。会期中のローンチ日は未確認)
発表主体:自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)
名称:LEAP Guidance Version 2.0

企業や金融機関が、自然との接点、依存・影響、リスク・機会を特定・評価するための手順を更新したもの。付属書4では、侵略的外来種に関する詳細なガイダンスが追加されています。

関連リンク:TNFD公式サイト

4.SBTNの自然関連目標設定ガイダンス更新†

発表日:10月13日(提供資料に記載された公開日。会期中のローンチ日は未確認)
発表主体:Science Based Targets Network(SBTN)
名称:自然関連目標設定ガイダンスの更新(個別文書名・版番号は要確認)

企業による科学に基づく自然関連目標の設定を支援するガイダンス。TNFDの評価プロセスとの整合性を強め、NPIの自然の状態指標との接続を進める更新がされています。

関連リンク:SBTN公式サイト

5.NPI「State of Nature指標とGBFモニタリング枠組みの整合に関する情報ペーパー」

発表日:10月15日(提供資料に記載された公開日。会期中のローンチ日は未確認)
発表主体:Nature Positive Initiative(NPI)
名称:State of Nature指標とGBFモニタリング枠組みの整合に関する情報ペーパー(仮訳)

NPIの自然の状態指標と、GBFの進捗を測るモニタリング枠組みとの関係を整理する資料。企業などによる測定と、国・世界レベルの進捗把握をどのようにつなげるかを考えるためのものです。

関連リンク:NPI公式サイト

6.「State of Biodiversity Action」――GBF実施の初の世界的進捗評価

発表日:10月15日
発表主体:CBD事務局
名称:State of Biodiversity Action: The Global Report on Collective Progress

GBFの実施状況について、初の世界的な進捗評価を示した報告書。約9割の国が国内目標を設定するなど取組は広がる一方、評価された目標のうち順調に進んでいるものは半数に満たないと報告しています。COP17で行うグローバルレビューの重要な基礎資料です。

関連リンク:報告書・関連資料/CBDによる発表紹介

7.リーダーズサミット「エレバン宣言」と種の回復に向けた連携

発表日:10月16日
発表主体:リーダーズサミット参加国/アルメニア・コロンビア両政府/民間財団等
名称:Yerevan Declaration/Coalition of Action to Recover Endangered Species(CARES)/Species Recovery Alliance

リーダーズサミットでは、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復に転じさせるため、実施の加速、資金拡充、国際協力を求める「エレバン宣言」を採択しました。

同日、アルメニアとコロンビアは、絶滅危惧種の回復を進める政府間連携「CARES」を17の創設参加国とともに発足させました。また、CBDの会期第1週の総括によると、9つの慈善団体による「Species Recovery Alliance」が、2030年までの5年間で5億米ドルの拠出を表明しました。政府の政策連携と民間の資金連携は、別の枠組みとして区別する必要があります。

関連リンク:エレバン宣言(CBD公式記事内に原文リンク)/CARES発足発表(Reverse the Red)/CBD第1週総括・資金発表(PDF)

会期中の主要ローンチ・発表

8.「Local Biodiversity Outlooks 3」

発表日:10月20日
発表主体:International Indigenous Forum on Biodivesity
名称:Local Biodiversity Outlooks 3(LBO-3)

先住民族・地域コミュニティの視点から、生物多様性の状態、保全・持続可能な利用の実践、課題を伝える報告書。世界的な進捗評価を、地域の経験や知識、権利の観点から補完するものとして紹介されています。

関連リンク:Local Biodiversity Outlooks公式サイト

9.IUCNの保護・保全地域に関する国際基準第2版

発表日:10月20日
発表主体:国際自然保護連合(IUCN)
名称:IUCN Global PCA Standard Version 2.0(提供資料の表記)

保護地域・保全地域の実効性、公平性など、自然保護の「質」を評価する国際基準の新版。面積の拡大とともに、管理の質や保全成果を確かめるための枠組みとして紹介されています。

関連リンク:IUCN公式サイト

10.IUCN全体で取り組む侵略的外来種戦略

発表日:10月21日
発表主体:IUCN
名称:IUCNの侵略的外来種に関する全体戦略

侵略的外来種の侵入予防、早期発見、管理に向け、IUCNの専門家、会員、地域ネットワークの力を結集する戦略。個々の取組をつなぎ、国や分野を越えた対応を強化する動きとして紹介されています。

関連リンク:IUCN公式サイト

11.先住民族・地域コミュニティと進める生態系再生のガイド

発表日:10月21日(提供資料による)
発表主体:IUCN(共同発行主体は要確認)
名称:ECOSYSTEM RESTORATION WITH INDIGENOUS PEOPLES AND LOCAL COMMUNITIES A Practical Guide

生態系再生における先住民族・地域コミュニティの参画や協働を支援するガイダンス。提供資料では、再生の取組を地域の人々とともに進めるための資料として紹介されています。

関連リンク:IUCN公式サイト

12.世界のサンゴ礁生態系のレッドリスト評価

発表日:10月22日(提供資料による)
発表主体:IUCN
名称:世界のサンゴ礁生態系レッドリスト評価(正式報告書名は要確認)

サンゴ礁を構成する個々の種だけでなく、生態系としての崩壊リスクを評価するもの。提供資料には世界127のサンゴ礁生態地域の評価と記載されていますが、評価対象数、リスク区分、将来予測の条件は原文確認後に確定します。

関連リンク:IUCN公式サイト

13.ISSB「自然関連開示」の実務記述書案

発表日:10月22日(COP17での紹介ウェビナーも同日)
発表主体:IFRS財団・国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
名称:自然関連開示に関する公開草案(IFRS Sustainability Practice Statement案)

企業の自然への依存・影響から生じるリスクと機会について、投資家に重要な情報を提供するための実務記述書案。TNFDの成果を広く取り入れ、所在地の重要性や先住民族・地域コミュニティ等との関わりも重視しています。

確定した開示基準の発表ではなく、2027年2月19日まで意見を募集する公開草案です。ISSBは、実務記述書として最終化するか、基準など別の形式とするかについても意見を求めています。

関連リンク:IFRS財団公式発表・公開草案へのリンク

14.IUCNグリーンリストに新たな25地域

発表日:10月23日(提供資料による)
発表主体:IUCN
名称:IUCN Green List of Protected and Conserved Areasへの新規登録

効果的で公平な管理により保全成果を上げている保護地域・保全地域を評価するIUCNグリーンリストの発表。提供資料では、新たに25地域が加わったと紹介されています。前記の国際基準の改訂と、個別地域の登録発表は別の動きです。

関連リンク:IUCN公式サイト

15.Nature Action 100「Company Benchmark 2026」

発表日:10月24日(会期中の最初の主要紹介イベント。結果のウェブ公表は10月19日)
発表主体:Nature Action 100(事務局共同主導:Ceres・IIGCC、技術諮問グループ主導:Finance for Biodiversity Foundation)
名称:Nature Action 100 Company Benchmark 2026

自然に関する投資家の期待に対し、対象100社の取組を評価した第2回ベンチマーク。自然損失への対応等を約束する企業は2024年の69社から95社へ、少なくとも一つの定量的・期限付き目標を開示する企業は48社から76社へ増加しました。一方、依存・影響の包括的評価や、資金・ガバナンス面での実施体制には課題が残ります。

10月24日にBusiness and Finance Hubで主要結果の紹介イベントを実施予定と公式発表で案内し、27日にも別の紹介イベントを設定しています。

関連リンク:公式発表・会期中イベント日程/Company Benchmark

16.WBCSD「Nature Action Portal」更新

発表日:10月24日
発表主体:持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)
名称:Nature Action Portalの更新

企業の自然関連行動を支援する情報基盤の更新。企業行動とGBFの関係を整理する支援、サプライチェーン管理の支援、企業事例などで構成されています。

関連リンク:WBCSD公式サイト

17.自然と文化をつなぐ「Erebuni-Yelvan宣言」†

発表日:10月24日
発表主体:Nature-Culture Summit参加者等
名称:Erebuni-Yelvan宣言

自然と文化の関係を扱うサミットの成果文書。10月16日のリーダーズサミットによる「エレバン宣言」とは別の文書として整理しています。本文確認前のため、個別の約束や提言内容は記載していません。

関連リンク:COP17公式会議ページ

18.GEF・GBFFへの追加資金拠出

発表日:10月26日
発表主体:各拠出政府等/地球環境ファシリティ(GEF)
名称:GEF第9次増資関連の表明/Global Biodiversity Framework Fund(GBFF)への追加拠出

GEFの増資とGBFFへの拠出を通じ、生物多様性枠組の実施資金を確保する動き。CBDの10月26日の公式総括では、会期第1週にGBFFへ6主体から約6,013万米ドルの拠出表明があり、うち4主体は新規拠出者で、初の市政府による拠出も含むとしています。

GEF本体の増資とGBFFへの拠出は、対象基金が異なるため、合算せず区別して扱う必要があります。

関連リンク:CBD公式総括(PDF)/GEF公式サイト

19.「Yerevan Call on Incentives Positive to Biodiversity」

発表日:10月27〜28日の閣僚級会合でローンチ
発表主体:COP17議長国
名称:Yerevan Call on Incentives Positive to Biodiversity

生物多様性に有害なインセンティブの改革と、生物多様性に有益なインセンティブの拡大を後押しする呼びかけ。GBFターゲット18の実施に関わる議長国の主要イニシアティブの一つです。CBDは閣僚級会合でのローンチを報告しています。提供資料にある「フレンズオブ目標18」の組織形態・参加主体は別途確認が必要です。

関連リンク:CBDが紹介するローンチ発表

20.生物多様性モニタリングの技術プラットフォーム

発表日:10月27日
発表主体:COP17議長国等
名称:Yerevan Technology Platform for Biodiversity Monitoring

各国の生物多様性モニタリングを支援する議長国イニシアティブ。提供資料では衛星観測、AI、データ分析などの活用が紹介されています。

関連リンク:主催国の紹介ページ(CBD掲載リンク)

21.山岳・関連淡水生態系のためのエレバン・プラットフォーム

発表日:10月27日
発表主体:COP17議長国等
名称:Yerevan Platform on Mountains and Related Freshwater Ecosystems

山岳とそれに関連する淡水生態系を対象とする議長国イニシアティブ。CBDは、生物多様性枠組の実施上の課題への対応として発足を紹介しています。参加国、活動内容、運営の仕組みについては、個別資料の確認が必要です。

関連リンク:主催国の紹介ページ(CBD掲載リンク)

22.初の「Women’s Biodiversity Outlook」

発表日:10月27日
発表主体:CBD Women’s Caucus
名称:Women’s Biodiversity Outlook

女性の経験や実践を通じて、生物多様性保全とジェンダーの関係を示す報告書。提供資料では、世界各地の71事例を分析し、5つの転換を提示したと紹介されています。各転換の内容や事例数は、報告書本文との照合後に確定します。

関連リンク:CBDジェンダーコーカス

23.OECMの取組を支える世界的ハブ

発表日:10月28日
発表主体:COP17議長国等
名称:Yerevan OECM Global Hub

保護地域以外で生物多様性保全に貢献する地域「OECM」の取組に関する世界的ハブ。GBFターゲット3の実施に関わる議長国イニシアティブの一つです。提供資料の「OECMアクションハブ」について、CBD公式総括の名称を採用しました。

関連リンク:主催国の紹介ページ(CBD掲載リンク)

24.自然再生の世界的進捗報告書「Nature’s Comeback」

発表日:10月29日
発表主体:UNEP
名称:Nature’s Comeback

生態系再生の世界的な進捗を扱う報告書。提供資料ではGBFターゲット2に関する包括的評価として紹介され、再生活動の広がりとともに、淡水・海洋・沿岸での取組や資金確保の不足が示されています。再生活動の対象面積は、再生を完了した面積とは区別する必要があります。

関連リンク:国連「生態系回復の10年」公式サイト

25.自然再生と人の健康を結びつけるガイドライン

発表日:10月29日
発表主体:IUCN・生態系管理委員会(CEM)・国連「生態系回復の10年」関係者(発行体制は要確認)
名称:Restoring Ecosystems, Protecting Health: A practical guide to integrate zoonotic and vector-borne disease risk management in ecosystem restoration policy and practice

生態系再生の計画や実施に際して、人獣共通感染症や媒介生物を通じた感染症のリスクを考慮するための実務資料。提供資料では、自然再生と人の健康を結びつける新たなガイドラインとして紹介されています。

関連リンク:IUCN公式サイト


国際自然保護連合日本委員会

会長 道家哲平