生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)は、10月29日、予定される閉会まで残り1日となり、最終的な合意に向けた交渉が続きました。
27~28日の閣僚級会合を経て、政治的な調整が進められているものの、資源動員や遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)などの重要議題では、依然として各国の立場の違いが残っています。29日は作業部会での審議や非公式協議が夜遅くまで続き、会場には最終決着に向けた緊張感が高まっています。
一方、サイドイベントでは、世界の生態系再生の進捗を初めて包括的に評価した報告書が発表されるなど、2030年目標の達成に向けた具体的な取組が紹介されました。
政府間交渉――主要議題で最終調整が続く
29日は、2つの作業部会(WG1・WG2)で決定案の審議が進められました。
生物多様性条約本体では、資源動員、資金メカニズム、主流化、モニタリング枠組み、能力構築、地方自治体の参画、海洋・沿岸生物多様性、森林生物多様性、生物多様性と健康、野生生物の持続可能な管理などが議論されました。また、カルタヘナ議定書と名古屋議定書についても、会議運営の有効性に関する審議が行われました。
作業部会では、一部の議題について決定案の文言整理や合意が進みましたが、未合意の文言を残したまま承認された文書もあり、この日の作業部会での承認は、COP本会議での正式採択を意味するものではありません。
特に資源動員では、資金供出者の範囲をどう広げるか、将来の資金メカニズムをどのような制度とするかについて、各国の立場の違いが残っています。28日に行われた閣僚級協議の報告では、合意の可能性はあるものの、その余地は限られているとの認識が示されました。
DSI、先住民・地域社会に関する第8条(j)、保護地域などについても、議長の友人グループによる非公式協議が続けられました。
交渉が深夜まで続くなか、IISDのEarth Negotiations Bulletin(ENB)は、資金問題やDSIなどが会議の成功を左右する重要な課題として残っていると報告しています。
サイドイベント――自然再生の世界的な進捗を初めて包括的に評価
29日は、会場で「Restoration Day(生態系再生の日)」が開催され、国連環境計画(UNEP)、国連食糧農業機関(FAO)、生物多様性条約事務局などが関わる報告書『Nature’s Comeback:人と地球のための生態系再生の拡大』が発表されました。
この報告書は、国連生態系回復の10年(2021~2030年)と、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)のターゲット2に向けた進捗を評価したものです。
報告書によると、世界149か国で約2億5,200万ヘクタールの土地や生態系が再生活動の対象となっています。一方、2030年の目標達成には、取組の大幅な拡大が必要であり、特に淡水、海洋、沿岸の生態系での取組が不足しています。
また、生態系再生に必要な資金を、現在の年間約640億米ドルから2030年までに約2,960億米ドルへと、4倍以上に増やす必要があるとしています。
ただし、報告された面積は再生活動が進められている面積であり、自然の回復が完了した面積を意味するものではありません。今後は、活動の規模だけでなく、実際に自然の状態がどれだけ改善したかを評価することが重要になります。
同日には、新たな5件の「国連世界生態系再生フラッグシップ(UN World Restoration Flagships)」も発表されました。
生物多様性と司法、科学、金融のつながりにも注目
29日には、CBDのCOPとして初めて「Judges Day(司法の日)」が開催されました。生物多様性に関する国際的な目標を、各国の法律や司法制度、法執行につなげるための議論が行われました。
また、自然再生に関するサイドイベントでは、人工知能(AI)、リモートセンシング、環境DNAなどを活用した科学的なモニタリングや、自然再生を大規模に進めるための資金調達、地域社会や先住民による取組などが紹介されました。
IUCNも、生態系再生と人の健康を結びつける新たな実務ガイドラインを発表しました。生態系の再生を進める際に、人獣共通感染症などのリスクにも配慮する「One Health」の考え方を取り入れたものです。
これらの動きは、生物多様性保全が自然保護の専門分野にとどまらず、司法、保健、科学技術、金融など幅広い分野と結びつきながら進められていることを示しています。
閉会に向けて――国際的な合意を実施につなげられるか
COP17は30日に予定上の最終日を迎えます。
今回のCOP17では、GBFの最初のグローバルレビューを通じて、2030年目標の達成に向けた取組が十分なペースで進んでいないことが明らかになりました。
その一方で、会場では自然再生の進捗評価、企業による自然への影響測定、保護地域以外の保全活動を支える仕組み、資金動員や科学技術協力など、具体的な行動を促す取組が数多く発表されています。
政府間交渉では、こうした取組を支える資金や制度について、最後まで難しい調整が続いています。
COP17が、2030年に向けて実施を加速させるための具体的な道筋を示せるかどうか。最終日の交渉結果が注目されます。
主な参考資料
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IISD Earth Negotiations Bulletin, Daily Report for 29 October 2026
https://enb.iisd.org/un-biodiversity-conference-cbd-cop17-daily-report-29oct2026 -
UNEP, Nature is making a comeback, but the world must move faster to meet restoration targets(2026年10月29日)
https://www.unep.org/en/news-and-stories/press-release/nature-making-comeback-world-must-move-faster-meet-restoration -
UNEP, Restoration Day at CBD COP17
https://www.unep.org/en/events/unep-event/restoration-day-cbd-cop-17 -
UNEP, UNEP at the UN Biodiversity Conference
https://www.unep.org/en/events/conference/unep-un-biodiversity-conference
※交渉に関する記述は10月29日時点の状況です。作業部会での決定案の承認と、本会議での正式採択を区別しています。























