生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)は、10月28日、2日間にわたる閣僚級ハイレベル・セグメントを終え、会期末の30日に向けた最終交渉に入りました。会場では、各国政府や国際機関の代表が、2030年までの生物多様性目標の達成に向けた行動の加速を訴えました。一方、交渉では資金動員や遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)などの重要議題について、閣僚級での非公式協議が行われ、政治的な妥協を模索する動きが本格化しています。

サイドイベントでは、30by30の実施を支える新たな国際協力の仕組みや、企業による自然への影響評価、自然を活用した解決策(NbS)など、具体的な取組の発表が相次ぎました。

閣僚級会合が終了――交渉は政治的な判断を求める段階へ

27日から始まったハイレベル・セグメントでは、各国政府、国際機関、市民社会などの代表が発言しました。

IUCNのグレテル・アギラール事務局長は、今回のグローバルレビューによって、2030年目標の達成が軌道に乗っていないことが明らかになったと指摘し、目標を再確認するだけでなく、具体的な実施を加速させる必要性を強調しました。

また、自然保護を環境行政だけの課題とせず、経済活動や資金の流れに組み込むこと、科学的な知見や既存のツールを活用すること、先住民・地域社会、女性、ユース、企業などとの協働を進めることを呼びかけました。

28日夜の進捗確認本会議では、COP17議長が、27日夜に交渉にあたっての議長レターを発出したこと、また、28日にグローバルレビュー、資源動員、DSI、先住民・地域社会に関する議題について、閣僚級の非公式協議を行ったことを報告しました。交渉担当者の間では合意に至らなかった問題について、各国の閣僚や代表団長が政治的な判断を行い、最終的な合意を目指す段階に入っています。

主要議題の交渉が続く――カルタヘナ議定書では2件の決定を正式採択

28日も、複数の作業部会やコンタクトグループで交渉が続けられました。生物多様性条約(CBD)本体では、資源動員・資金メカニズム、GBFグローバルレビュー、DSI、先住民・地域社会に関する第8条(j)、保護地域、主流化、能力構築、合成生物学、IPBESとの連携、農業・森林生物多様性、地方自治体の役割など、幅広い議題が検討されました。これらについては、作業部会等で部分的に合意が進んだものもありましたが、28日の本会議では正式採択に至らず、引き続き交渉・調整が行われています。

特に、資源動員では資金供出者の範囲や将来の資金メカニズムの制度設計、DSIではカリ基金の運用をどのように進めるかが、政治的な判断を要する問題となっています。

一方、カルタヘナ議定書第12回締約国会合(CP-MOP12)では、28日の本会議において2件の決定が正式に採択されました。 採択されたのは、議定書の有効性に関する第5回評価・レビューと、遺伝子組換え生物のリスク評価・リスク管理に関する決定です。後者には、遺伝子組換え魚類のリスク評価に関する任意ガイダンスを検討する専門家グループの設置が含まれています。

また、次期COP18の開催地としてエクアドルとパナマが立候補していることが紹介され、30日に投票で決定する予定となりました。

交渉の終盤を迎え、会場には、重要な決定をまとめ上げようとする緊張感が高まっています。28日のIISD Earth Negotiations Bulletin(ENB)も、交渉官の間で解決できなかった問題を閣僚級で調整する動きと、資金負担をめぐる各国の立場の違いを伝えています。

30by30の実施を支える「Global OECM Action Hub」が発足

政府間交渉と並行して、28日には、議長国アルメニア、CBD事務局、国連食糧農業機関(FAO)、IUCNが関わる「Global OECM Action Hub」の立ち上げが発表されました。OECM(保護地域以外で生物多様性の保全に貢献する地域)は、2030年までに陸と海の少なくとも30%を保全する「30by30」の実現に重要な役割を果たします。

新たなハブは、各国がOECMを特定・評価し、適切に管理・報告するための技術的な支援や知識共有を促進することを目指しています。

日本でも自然共生サイトの認定などを通じて、企業や地域社会が関わる保全活動が広がっています。今回のハブは、こうした取組を国際的な保全の枠組みとつなげるうえでも注目されます。

企業の自然への影響を科学的に評価――IUCN RHINOの新たな事例

28日には、IUCNと鉱山企業Newmontが、オーストラリアの鉱山周辺地域における生物多様性評価の事例を発表しました。

この取組では、IUCNが進める「RHINO」イニシアティブと、絶滅リスクの低減に向けた保全活動の可能性を評価する「STAR」指標を活用し、保全対策を優先すべき種や脅威を分析しています。企業が自然への影響を把握するだけでなく、どの場所で、どのような保全活動を優先すべきかを科学的に検討する事例として注目されます。

今回のCOP17では、NPI(Nature Positive Initiative)による自然の状態を測定する共通指標の発表など、企業の自然関連の取組を具体的な評価や行動につなげる動きが広がっています。ただし、こうした評価は保全活動の優先順位を示すものであり、自然の状態が実際に改善したことを示すには、その後の継続的なモニタリングが必要です。

会期末に向けて――国際的な合意を具体的な行動へ

COP17は残り2日となりました。

10月29日は、再生の日(Restoration Day)と、COPで初めての司法・法制度の日(Judge’s Day)と定め、様々なイベントや発表が予想されます。

政府間交渉では、資源動員やDSIなどの重要議題について、閣僚級の政治的な判断による合意形成が模索されています。一方、会場で展開されるさまざまなイニシアティブは、国際的な目標を現場での保全活動や企業の行動につなげる具体的な道筋を示しています。

今回のCOP17では、グローバルレビューを通じて2030年目標の達成に向けた取組の不足が明らかになりました。

その状況を変えるためには、各国政府による政策や資金の強化に加えて、科学的な知見の活用、企業・金融機関の行動、地域社会との協働など、さまざまな主体による取組を広げる必要があります。

COP17の最終的な成果が、2030年に向けた行動の加速につながるものとなるか。残された交渉の行方が注目されます。


参考資料

※交渉に関する記述は10月28日時点の状況です。作業部会等での文言合意と、COP本会議での正式採択を区別しています。