アルメニアの首都エレバンで開催中の生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)も、1週目を終えました。政府間交渉が続く一方、会場では企業や金融機関が「開示から行動へ」をテーマに数多くのセッションを開き、実践を競い合う場となっています。IUCN日本委員会(IUCN-J)は今回、協賛企業の皆さまとともに、日本の取組を国際社会に発信する活動を行いました。本レポートでは、その概要をご紹介します。

協賛企業4社とともに展開する日本ブース

協賛4社とともに出展した日本ブース

IUCN-Jは、イオン株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社バイオーム、株式会社ファーストリテイリングの4社のご協賛により、会場内に日本ブースを設けています。ブースでは、熊本で開催したGlobal Nature Positive Summit 2026(GNPS2026)の報告と、協賛各社の取組をバナーやデジタル展示で紹介しています。

  • イオン:35周年を迎えた植樹活動「イオン ふるさとの森づくり」
  • 竹中工務店:地上と地下を一体で捉えた、自然と都市の再生型の都市デザイン
  • バイオーム:市民参加とAIによる生物多様性データの基盤「ネイチャー・インテリジェンス・インフラ」
  • ファーストリテイリング:衣服の事業モデルと、主要な天然素材の調達における取組

各国の政府関係者、国際機関、NGO、企業の担当者が足を止め、日本企業のデータ活用や現場での取組について質問される場面も多く見られます。「国際的な議論を日本に紹介する」だけでなく、「日本の実践を世界に届け、新たな連携につなげる」場として、ブースが機能し始めています。

IUCNパビリオンで3つのセッションを開催

IUCN-Jは、IUCNパビリオン(Forum Room A)において、熊本宣言を踏まえた3つのセッションを開催しました。テーマは「サプライチェーン」「ファイナンス」「ランドスケープ」です。

  • 10月24日(土)13:30〜14:45 SUPPLY CHAIN「開示から移行へ:グローバルサプライチェーン全体で、ターゲット15を測定可能な成果につなげる」(登壇:EY、IUCN日本委員会)
    EY Japanの茂呂正樹氏の進行のもと、EYのAlexis Gazzo氏(グローバル気候変動・サステナビリティサービス リーダー)らが、同社の報告書「When the system becomes the strategy」をはじめとする知見をもとに発表しました。
  • 10月25日(日)連続セッション「ネイチャーポジティブの革新を加速する ― GNPS 2026と熊本宣言を踏まえて」(2部構成)
    • 第1部|資金から(10:30〜11:45)「自然を投資対象に ― 地域に根ざしたネイチャーポジティブの取り組みへの資金動員」(登壇:PwC、IUCN日本委員会)
      PwCの服部徹氏の進行のもと、まずGNPS2026と熊本宣言の成果、熊本の地下水を軸にしたランドスケープ・アプローチ(熊本モデル)が紹介されました。続いてIUCNは、触媒的資金と技術支援でプロジェクトを投資可能な段階に育てる「WALD Innovation Facility」の事例を紹介しました。自然災害リスクの高まりがもたらす「プロテクションギャップ」(保険でカバーされない損失の拡大)の問題が説明されました。
      PwCからは、気候と自然の相乗効果を地域の金融で実現する道筋が紹介されたほか、現場での最大の課題は資金不足よりも、関係者をつなぐ「オーケストレーション」の不足にあるとの指摘がありました。
    • 第2部|ランドスケープへ(12:00〜13:15)「データ・技術・企業の行動を具体的な成果につなげる」(登壇:竹中工務店、東北大学、バイオーム、PwC、IUCN日本委員会)
      東北大学からは、環境DNAによる生物多様性の観測ネットワーク「ANEMONE」と流域での合意形成の取組が紹介され、観測と対話の両面から科学が地域の行動を支える役割が示されました。バイオームは、市民参加とAIによる生物多様性データを企業や自治体の意思決定に生かす事例を、竹中工務店は、都市における自然を基盤とした解決策(NbS)の研究開発から実装までの取組を発表しました。PwCからは、サプライシェッドとランドスケープを組み合わせたアプローチの研究が紹介されました。

10月24日(サプライチェーン)の登壇者

10月25日 PART 1(ファイナンス)のパネルディスカッション

10月25日 PART 2(ランドスケープ)の登壇者

いずれのセッションも、技術やデータがそろいつつある今、それをどう現場の成果と資金の流れにつなげるかが共通の問いでした。日本企業の具体的な取組を、国際機関や海外の参加者に向けて直接発信できたことは大きな成果です。

協賛企業とIUCN幹部とのクローズド・ミーティング

10月25日には、協賛企業の皆さまと、IUCNのMartin Sneary氏(Director, Business and Nature)とのクローズドなミーティングを、IUCNパビリオン内の会議室で行いました。少人数で率直に意見を交わす場とし、今後5〜10年の大きな流れや、企業がどこから取組を始めるべきか、日本での生物多様性データの収集・活用、建設プロジェクトでの資材調達のあり方などについて議論しました。

IUCNのSTAR指標(種の絶滅リスク低減への貢献を測る指標)やIUCN RHINOなどのツールと、それらを活用した企業・金融機関の取り組みが紹介されました。協賛企業からは、それぞれの事業に即した具体的な質問が寄せられました。

IUCNパビリオン会議室でのクローズド・ミーティング

次につなげるために

COP17の会場では、開示の枠組みが整った「その先」、つまり測定と行動、そして資金の流れをどう変えるかに議論の焦点が移っています。今回の活動は、その流れの中で日本企業の実践を示し、国際機関や海外の企業・金融機関との新たな対話の糸口をつくる第一歩となりました。

IUCN-Jは、今回生まれたつながりを一過性で終わらせず、次の行動につなげていきます。

  • 報告会で、COP17の成果と今回の議論を国内の企業・関係者の皆さまと共有
  • IUCNのデータやツール、研修の活用、IUCNとの個別・共同の取組に向けたコーディネート
  • インド(アンドラプラデシュ)で開催されるGNPS2027や、今後の国際会議での継続的な発信

国際的な議論と日本国内の実践をつなぐ「プラットフォーム」として、IUCN-Jは今後も多くの企業・団体の皆さまとともに歩んでまいります。次の機会にご一緒いただける企業・団体の皆さまからのご連絡も、お待ちしております。

謝辞

今回の日本ブースの出展は、イオン株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社バイオーム、株式会社ファーストリテイリングの4社のご協賛により実現しました。また、IUCNパビリオンでのセッションでは、EY、PwC、竹中工務店、バイオーム、東北大学の皆さまにご登壇いただきました。国際的な場で日本の取組を発信するという私たちの挑戦に賛同し、ご協力くださった皆さまに、心より感謝申し上げます。

会期は10月30日まで続きます。引き続き、現地の様子をお伝えします。

IUCN日本委員会
服部実