ナイロビで開催されてた生物多様性条約の第28回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA-28)では、昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)の進捗を評価する「グローバルレポート」が大きな注目を集めました。
KM-GBFは、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを目指す国際目標です。2022年の採択以降、各国では国家戦略や国別目標の見直し、保護地域・OECMの拡大、資金動員、企業や自治体を含む多様な主体の参画など、さまざまな取り組みが進められてきました。
今回のSBSTTA-28で扱われているグローバルレポートは、そうした世界全体の取り組みが、2030年目標に向けてどこまで進んでいるのかを確認するための重要な文書です。COP17で予定されているKM-GBFのグローバルレビューに向けた基礎資料でもあり、各国の国別報告書や国家戦略、国別目標などをもとに、23のターゲットの進捗が整理されています。
※グローバルレポートの内容やSBSTTA-28での交渉論点についての詳細は、WWFジャパン記事「【SBSTTA-28報告】KM-GBFの中間評価『グローバルレポート』と交渉の論点を解説」をご覧ください。
SBSTTA-28で焦点となったグローバルレポート
SBSTTA-28の会場では、グローバルレポートそのものが交渉対象となったわけではありません。しかし、その内容をCOP17に向けた決定案の中でどのように受け止めるのかが、大きな論点となりました。
レポートの総括的なメッセージは、簡単にいえば「取り組みは進んでいるが、このままでは2030年目標の達成には届かない」というものです。
KM-GBFの採択以降、世界各地で行動や協働、学びが広がっていることは確認されています。一方で、23のターゲット全体を見ても、達成に向けた進捗は十分とはいえません。
進展の一方で残るギャップ
グローバルレポートで特に印象的なのは、単に「進捗が遅れている」と指摘するだけではなく、その遅れを複数の側面から整理している点です。
一つは、各国が設定した国別目標と、KM-GBFのグローバルターゲットとの間にあるギャップです。つまり、各国の目標を積み上げても、まだ世界全体の目標を十分にカバーできていない部分があります。
もう一つは、実施のギャップです。目標は掲げられていても、2030年に向けた行動のスピードや規模が十分ではないという問題です。これは、資金、能力構築、技術・科学協力などの実施手段、セクター間の政策連携、先住民及び地域コミュニティ、女性、若者、企業など多様な主体の参加、データや知識などの分野での不足や遅れが要因として指摘されています。
会場では、こうしたレポートのメッセージを受け止め、今後の行動強化につなげる必要性が繰り返し指摘されていました。
進捗の遅れをどう捉えるか
一方で、交渉の焦点となったのは、「なぜ進捗が足りていないのか」をどう表現するかという点でした。
特に議論になったのが、政治的意思や野心の不足をどう扱うかです。グローバルレポートの初期の表現では、各国の政治的意思や野心に関するメッセージが前面に出ていました。しかし、途上国を中心に、「不足しているのは政治的意思ではなく、資金、能力構築、技術移転・技術協力などの実施手段である」という声が強く出されました。
また、グローバルレポートの作成過程で参照された国別報告書についても、すべての締約国が期限内に提出できていたわけではありません。特に、報告書作成のための資金や技術的能力が不足していた国々の状況が、レポートに十分反映されていないのではないかという指摘もありました。
このため、SBSTTA-28では、グローバルレポートのキーメッセージ本文を決定案にそのまま引用することは見送られました。一方で、各キーメッセージの見出しや、レポートが示した具体的な分析結果の多くは決定案に反映されました。進捗の遅れや実施ギャップを正面から受け止め、今後の行動強化につなげようとする姿勢は、最終的な合意にも一定程度反映されたといえます。
後半会合、SBI-7への注目
SBSTTA-28での議論は、科学的・技術的な観点からKM-GBFの現在地を確認するものでした。そこで示された進捗の遅れを、どのような行動につなげていくのかは、続く第7回実施補助機関会合(SBI-7)に引き継がれます。
SBI-7では、資金動員を含む実施手段や、各国の行動強化に向けた議論が焦点となります。グローバルレポートが示した厳しい評価を、COP17に向けて具体的な実施の加速につなげられるかが注目されます。
WWFジャパン 北出 智美























