COP17でOECMに関する複数のサイドイベントに参加し、保護地域の外で続いてきた保全を、国際的に認める取り組みについて理解を深めています。
私は、自然の価値が公的に認められ、その保全を支える輪が広がることが、保全の取り組みを社会的な評価につなげる上で、とても重要だと考えています。
一方で、自然が身近にある地域や、自然とともに生きている人々にとって、認定にはどのような意味や必要性があるのでしょうか。会議での議論とIUCN日本委員会の道家さんとの対話から、認定の先にある地域の未来について考えてみます。
地域の保全を認めるために生まれたOECM
まず、簡単にOECMの歴史をお話しします。
OECMは、保護地域以外で、生物多様性の長期的かつ効果的な保全に貢献する区域を指します。その文言は、2010年に愛知県名古屋市で開催されたCOP10で採択された愛知目標11に盛り込まれ、2018年のCOP14で定義と基準が合意されました。現在は、2030年までに陸域・内陸水域と沿岸・海域のそれぞれ少なくとも30%を効果的に保全する「30by30」を支える仕組みの一つです。
国際的な枠組みというのは、合意形成、内容の作成、それから実行というプロセスにおいて、長い時間を要するものだと感じます。
道家さんとのお話から印象に残ったのは、地域社会やNGOなどが担ってきた保全を、国際的な目標の中でも認めようとする背景です。「守る」を形にしていくために、地域での実践が先にあり、その貢献を可視化する枠組みが整えられてきたと理解しました。

世界で進む制度づくりと認定後の支援
サイドイベントでは、各国が異なる段階でOECMの実施を進める様子が紹介されました。ケニアでは評価・認定のための国内指針づくりが進み、台湾の発表では、認定後の長期的な管理をどう支えるかが議論されていました。
共通していたのは、区域を認めるだけでなく、保全成果を確かめ、地域の権利や意思決定を尊重しながら管理を続ける必要があるという点です。台湾の発表では、すでによい管理をしている地域にとって、申請にどのようなメリットがあるのかという疑問も紹介されました。認定を広げるためにも、地域がその意義を実感できることが重要だと感じます。
自然が身近な地域にとっての認定の意味
私は、開発の圧力が強い場所や自然が少ない場所では、その価値を認める意義が伝わりやすい一方、自然が身近な地域では認定の必要性が見えにくいのではないかとも考えています。申請しないことを、自然への関心が低いことと結びつけることはできません。自然を大切にしていても、認定のメリットがわからなかったり、申請に使う人手がなかったりする可能性があります。
また、認定が開発を自動的に禁止するわけではありません。日本の自然共生サイトも、認定やOECM登録によって新たな行動規制が生じるものではありません。だからこそ、公的な評価が、実際の保全の継続にどうつながるのかを見ていく必要があります。
この問いを、今後、地域の実践や認定後の変化を知ることを通じて、さらに深めていきたいと思います。
認められた価値を地域への支援につなげる
日本では、2023年度に自然共生サイトの認定が始まり、2025年には地域生物多様性増進法が施行されるなど、国内制度の整備が進んでいます。支援を求めるサイトと企業等のマッチングや、支援者に対する支援証明書の仕組みも設けられています。しかし、認定だけで地域に資金や人材が届くわけではありません。
日本のブースを担当している際にも、OECMに興味を持つ方々から、自然共生サイトについて「これに認められると地域社会にはどんなメリットがあるのか」という質問を何度かいただきました。
会場でOECMへの関心の高さに触れる一方、その価値を地域でどう実感し、支援につなげるかには課題があると感じました。環境省の発表によると、日本では2026年の6月末時点で610か所の自然共生サイトが認定されています。この数は国内の認定数であり、OECMの国際登録件数とは異なります。制度の整備・運用が進む日本の経験は、認定後の支援のあり方を考える上でも参考になるのではないでしょうか。
人口減少や高齢化が進む中で、地域が守りたい自然や文化を、どのような方法で引き継ぐのか。OECMの広がりを、これまで自然を守ってきた人々への評価と、これからも守り続けるための支援につなげていく。その過程に、今後も注目していきたいと思います。
九州大学・国際森林学生団体IFSAQ
清水 万愛
参加セッションと参考資料
参加セッション
People, culture and biodiversity: Advancing area-based conservation potential in Socio-Ecological Production Landscapes and Seascapes (SEPLS)
Global concept, local proof: Who decides what counts as an OECM?
Getting OECMs Right: Addressing challenges and gaps to support credible implementation
制度に関する資料























