COP17に参加する中で、一つ疑問に感じたことがあります。それは、AIの利用と環境保全の関係です。

会場では、AIを活用して作成されたと思われるスライドを多く目にしました。また、AIを用いた生物多様性のモニタリングやデータ解析など、さまざまな技術が紹介されていました。参加者の中にも、AIによる翻訳や検索を活用し、議論への理解を深めている人が多くいたように感じます。

私自身も日常的にAIを利用しており、その利便性を実感しています。AIは膨大なデータを短時間で処理でき、生物多様性保全においても大きな可能性を持っています。

しかし、その一方で、AIの利用が環境に与える影響について、私たちはどれほど考えているのでしょうか。

 

AIを支えるデータセンターと環境負荷

AIの開発や利用には、大量のデータを処理するデータセンターが必要です。そこではサーバーの稼働や冷却のために、多くの電力が消費されています。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書『Energy and AI』(2025年)によると、世界のデータセンターの電力消費量は2024年に約415TWhと推計され、世界の電力消費量の約1.5%を占めています。さらに、2030年には約945TWhへと増加すると予測されています。

これはAIだけでなくデータセンター全体の数値ですが、AIの普及が電力需要の増加を促す重要な要因の一つとなっています。

また、データセンターの環境負荷は電力消費だけではありません。建設に伴う土地利用の変化、冷却に必要な水資源の利用、設備の製造に必要な資源の採掘など、生物多様性にもさまざまな影響を及ぼす可能性があります。

 

未来のデータセンターの在り方

10月28日には、「Strategic and practical work with biodiversity at datacenters – lessons and look into the future」というセッションに参加しました。

このセッションでは、データセンターの環境負荷を軽減する取り組みに加え、将来のデータセンターが自然環境や地域社会とどのように共存していくべきかについて議論されました。

特に印象に残ったのは、データセンターを単なる情報処理施設ではなく、自然環境や地域社会と共存するインフラとして捉える考え方です。

登壇した企業からは、将来のデータセンターに向けた設計指針が紹介されました。そこでは、低炭素建築材料や再生可能エネルギーの活用、余剰熱の再利用、生物多様性への配慮、地域社会との協働などが重視されていました。

具体的には、データセンターから発生する余剰熱を温室での野菜生産に利用する事例や、建設前から昆虫のモニタリングを行い、生物多様性への影響を把握しようとする取り組みが紹介されました。

また、登壇者は、自然環境への配慮が開発計画の後半になって初めて検討されることがあると指摘し、計画の初期段階から生態学的な視点を取り入れる必要性を強調していました。

一方で、これらの取り組みはまだ発展途上にあり、生物多様性の評価方法や、事業全体で環境への配慮を実践する仕組みなど、課題も残されています。

質疑応答では、データセンターの効率化によってAIの利用コストが下がり、利用が拡大することで、結果的に資源消費が増加する「リバウンド効果」についても指摘がありました。

個々の施設の環境負荷を減らすことは重要ですが、それだけで社会全体の環境負荷が減るとは限りません。

自然を守るために、私たちが考えるべきこと

COP17では、生物多様性の損失を食い止め、回復させるために、各国が資金の確保や政策、企業の役割について議論していました。

しかし、こうした議論を聞く中で、私は、生物多様性の損失は特別な開発行為だけでなく、私たちの日常的な選択や便利さを追求する行動の積み重ねによっても引き起こされているのではないかと感じました。

新しい技術は社会に大きな利益をもたらします。一方で、その環境影響が十分に検討されないまま普及し、問題が顕在化してから対策が議論されることもあるのではないでしょうか。

昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の目標14・15では、生物多様性を政策や企業活動の意思決定に組み込むことが重視されています。これは、AIやデータセンターを含む新しい技術や産業の発展を考えるうえでも重要な視点だと思います。

今回のセッションでは、企業がすでに環境負荷を減らすための取り組みを進め、将来のデータセンターの在り方を模索していることを知りました。一方で、施設単位での環境対策だけでなく、技術の普及が社会全体に与える影響についても考える必要があると感じました。

環境保全のためにAIを活用することと、AIそのものの環境負荷を減らすこと。その両方を考えながら技術を発展させていく必要があります。

私たちは、失われた自然を回復するための資金を議論する一方で、自然を失わないための選択を、日々の暮らしや技術の発展の中でできているのでしょうか。

 

COP17への参加を通じて、生物多様性を守るためには、環境問題が起きてから対処するだけでなく、私たちの社会の仕組みや日々の選択そのものを見直すことも必要なのではないかと感じました。

 

九州大学・国際森林学生団体IFSAQ
清水 万愛

 

参考資料

[1]International Energy Agency(IEA)(2025)Energy and AI
https://www.iea.org/reports/energy-and-ai

[2]Convention on Biological Diversity(CBD)Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework: 2030 Targets
https://www.cbd.int/gbf/targets