10月19日、アルメニアの首都エレバンで、生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)が本格的に始まりました。
私は今回、森林分野に着目し、国際的な生物多様性目標がどのように現場の森林管理につながるのか、特にその実現を支える資金や関係者の役割について学びたいと考えています。
初日は3つのセッションに参加しました。そこで共通して感じたのは、国際的な森林保全の議論において、先住民族(Indigenous Peoples)や地域コミュニティ(Local Communities)が重要な存在であり、その立場から保全のあり方を考える必要があるということです。

国際的な森林保全と地域コミュニティ
国際的な生物多様性保全の議論では、資金の確保とその活用が重要な課題の一つとなっていると感じました。
特に、国際的な支援を受けて森林保全を進める取り組みでは、資金を提供する政府や国際機関、NGOなどと、実際に保全活動を担う国や地域社会との関係が重要になります。
なかでも印象に残った「Advancing Equity through Governance Assessment: Reflecting on Diverse Approaches, Good Practices, and Challenges」というセッションでは、コンゴ民主共和国、メキシコ、ケニアの事例が紹介されました。
コンゴ民主共和国では、先住民族が伝統的に利用してきた土地や、その権利、知識を尊重した保全の取り組みが紹介されました。また、メキシコでは、地域コミュニティ自身が土地との関係や管理の仕組みを振り返り、保全のあり方を検討する取り組みが紹介されました。
これらの事例で共通していたのは、森林を保全するうえで、誰が意思決定を行い、誰の意見が反映されるのかを重視していたことです。
また、「Embedding Grassroots Actors in the Global Conservation Movement: For Locally-Led Protection of Key Biodiversity Areas」では、地域主体の保全を実現するために、資金だけでなく意思決定の権限をどこまで地域側に委ねられるのかという議論がありました。
さらに、「From Buffer Zones to Biodiversity-Positive Landscapes: Agroecology and Human-Wildlife Coexistence in Protected Area Landscapes」では、森林の生態系サービスを経済的に評価することや、保護地域の周辺を含めた景観全体で、地域住民の生活と生物多様性保全を両立させる重要性について議論されました。
資金を提供する側と、現場で活動する側
セッション後、IUCN日本委員会の道家さんとお話しする中で、もう一つ考えさせられることがありました。
国際的な保全プロジェクトでは、地域主体の取り組みが重視される一方で、資金を提供する機関がプロジェクトの内容や進め方をある程度設計する場合もあるそうです。
資金を提供する側には、限られた予算を適切に使い、成果を示す責任があります。また、事業を円滑に進めるためには、一定の計画や管理体制も必要です。
一方で、実際に森林を守り、そこで暮らす人々にとっては、自分たちの意見や知識が十分に反映され、自ら意思決定に関わることが重要です。
私は、この両者の考え方にそれぞれ納得できる部分があると感じました。
地域の主体性を尊重することと、資金の使途や成果に対する説明責任を果たすことを、どのように両立できるのでしょうか。
資金を確保することだけでなく、誰がその使い道を決め、どのように地域の人々と協働していくのかが、保全活動を継続するうえで重要なのだと思います。
日本の地域の声は、国際会議に届いているのか
今回のセッションでは、各国の先住民族や地域コミュニティが抱える課題について、具体的な経験を交えた議論が行われていました。
こうした議論を聞く中で、森林保全を担う地域の人々の声を政策に反映させるという課題は、日本にとっても無関係ではないのではないかと考えました。
日本でも、林業の担い手不足や森林管理の継続、地域ごとの土地利用など、さまざまな課題があります。
もちろん、先住民族の土地に関する権利と、日本の林業や地域社会が抱える課題は、背景も性質も異なります。
しかし、現場で森林を守る人々の声を、政策や資金の仕組みにどのように反映させるのかという問いには、共通する部分があるように感じます。
日本の森林管理の現場が抱える課題や、地域の人々の声は、国際的な議論の中でどのように扱われているのでしょうか。
おわりに
私は今回のCOP17で、森林が森林として維持されることの価値が認められ、その保全や管理を担う人々に継続的な資金が届く仕組みについて学びたいと考えています。
初日の3つのセッションを通じて、その実現には、資金の確保だけでなく、誰がその使い道を決め、誰に利益が届くのかという視点も欠かせないと気づきました。
今後のCOP17でも、森林を守るための資金が実際に森林を守る人々にどのように届いているのか、そして現場の声がどのように意思決定に反映されているのかを追っていきたいと思います。
九州大学・国際森林学生団体IFSAQ
清水 万愛























