SBSTTA28は3日目を迎え、会議はプレナリー中心の段階から、各議題の条文を一つひとつ検討するコンタクトグループ中心の交渉へと本格的に移行しました。
午前のプレナリーでは議題4「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム)」が議論され、科学的知見を今後の昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実施にどのように反映していくかについて各国が意見を交わしました。
しかし、この日の会議の中心はプレナリーではなく、昼以降に相次いで開催されたコンタクトグループでした。会場では複数の交渉が同時進行し、多くの代表団が会場を行き来する一日となりました。
昼からコンタクトグループが本格始動
昼時間帯にはサイドイベントが開催される一方で、以下2つのコンタクトグループが並行して開催されました。
- 合成生物学
- 野生生物の持続可能な利用・管理
いずれも前日のプレナリーで設置が決めたあと、その晩に第1回目のコンタクトグループによる会合が開かれたものです。
保護地域では「ターゲット3時代」の作業計画を模索
午後の保護地域コンタクトグループでは、2004年COP7で採択された保護地域作業計画(PoWPA)を、GBFの下でどのように位置付け直すかについて議論が行われました。
交渉では、「Protected Areas(保護地域)」という従来の用語だけでなく、「Protected and Conserved Areas(保護・保全地域)」や「先住民地域共同体のテリトリー」といった現在の政策用語をどのように使い分けるかについても時間をかけて検討されました。一見すると用語の違いのようにも見えますが、その背景には、この20年間で保護地域政策が「面積の拡大」から「保全の質」「公平なガバナンス」「OECM」「先住民・地域社会との協働」へと発展してきた流れがあります。
PoWPAと現在議論している保護地域関する補完的作業計画を比較すると、保護地域政策そのものの進化を見ることができそうです。
また、議論が先住民や地域社会(IPLCs)の土地や権利の扱いに及ぶと、各国の制度や歴史的背景を反映して意見の隔たりが大きくなり、交渉は一気に慎重な雰囲気となりました。
海洋分野ではEBSAなどの議論が継続
同時進行した海洋・沿岸生物多様性のコンタクトグループでは、EBSA(Ecologically or Biologically Significant Marine Areas)の科学的レビュー手法に加え、今後どのような科学的ガイダンスや専門家による作業を進めるべきかについて議論が続きました。
現在検討されている文書を見る限り、EBSAレビューのための参考要素や、各国による新たな海域提案への技術支援、公海生物多様性協定(BBNJ協定)との連携強化などが盛り込まれており、CBDが海洋分野で果たす科学的役割の整理が進められています。
夜はPMRR(Global Review)の交渉
夕方18時から19時30分には、PMRR(Planning, Monitoring, Reporting and Review)の一部である指標枠組みに関するFriends of the Chair会合が開催されました。さらに20時からは、PMRRの中心議題であるGlobal Review(世界全体の実施状況レビュー)に関するコンタクトグループが始まり、議論は深夜まで続きました。
昆明・モントリオール生物多様性枠組では、各国の取組を定期的にレビューし、2030年目標の達成状況を世界全体で評価することが重視されています。今回はその中間レビューを科学技術的側面から検討することが期待されています。「達成の道筋に乗っていない」という診断に対し、残りの時間をどう活用するのか、国以外の主体(企業、自治体、NGO、先住民・地域社会など)の役割をどのように位置付けるのかは、今後のGBF実施を左右する重要な論点となっています。
前日のサイドイベントでは、多様な主体から、今回のレビューの仕組みには多くの改善点があることを主張していました(サイドイベント参加レポートは、今回、IUCN-Jが運営するオンランコミュニティNature+向けブログで紹介中です)
今後の注目点
会議3日目を終え、SBSTTA28はプレナリー中心の会議から、各コンタクトグループでCOP17勧告文を一つひとつ調整する本格的な交渉段階へと移行しました。
特に保護地域では、「30×30」の実現に向けて保護地域の質やガバナンス、先住民・地域社会との関係をどのように位置付けるかが重要な論点となっています。一方、PMRRでは2030年目標に向けた世界全体の進捗をどのように評価するかという、生物多様性条約全体の実施を支える仕組みづくりの議論が続いています。
今後数日間は、これらのコンタクトグループでの交渉結果が、SBSTTA28からCOP17への勧告案にどのような形で反映されるかが注目されます。
国際自然保護連合日本委員会
会長 道家哲平






















