SBI7の4日目となる8月7日は、プレナリーは開催されず、朝から夜までコンタクトグループでの交渉が続きました。
これまでのプレナリーで各国が基本的な立場を表明する段階から、COP17に送る勧告案について、実際の文章を一つひとつ確認し、各国間の相違を埋めていく段階へと完全に移っています。合意できない文言を示す「[ ](ブラケット)」が数多く残されるなど、交渉も本格化しています。
午前:グローバルレビュー―「実施の加速」をどう求めるのか
午前は、計画・モニタリング・報告・レビュー(PMRR)のうち、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)のグローバルレビューに関するコンタクトグループが開催されました。
大きな論点の一つとなったのが、グローバルレビューの結果を踏まえ、各国に「コミットメントを強化し、目標の範囲や対象を拡大する(strengthen their commitments and the scope and coverage of their targets)」ことを求めるかどうかです。
GBFの達成に向けて各国の取組をさらに引き上げる必要があるとする欧州諸国などに対し、途上国からは、グローバルレビューによって新たな行動や追加的な義務を求めることへの警戒が示されました。
この対立は、「GBF実施が十分に進んでいない原因をどこに求めるのか」という問題にもつながっています。実施の「意欲度(ambition)」をさらに高める必要性を指摘する意見がある一方、途上国からは、問題は意欲の不足ではなく、資金をはじめとする実施手段(means of implementation)が十分に提供されていないことにあるとの主張が繰り返されました。
特に資金の提供主体や実施手段に関する文章では意見の隔たりが大きく、複数の提案が[ ]に囲まれて併記される、非常に複雑な文章になりました。IISD-ENBによれば、先進国による途上国支援の責任を強調する意見に対し、「支援する立場にある国」へ資金拠出国を広げるべきとの意見も出され、共同議長が文章を再整理することとなりました。
グローバルレビューは単に世界全体の進捗を確認するだけではなく、その結果を受けて誰が、どのように実施を加速させるのかというCOP17の重要な政治的論点につながっていることが、交渉からも見えてきます。
午後:PMRR、資源動員、能力構築を並行して交渉
13時からは、グローバルレビュー以外のPMRRに関するコンタクトグループが開催されました。
続いて15時からは、資源動員と能力構築のコンタクトグループが並行して開催されました。
資源動員では、COPへの勧告案をまとめたノンペーパーをもとに、世界の生物多様性資金を効果的に動員する上での障壁と、その改善策について検討が進められました。
能力構築では、単発の研修や技術移転の機会を提供するだけではなく、各国自身が長期的・継続的に能力を高め、GBFを実施できるようにするcapacity development(能力開発)を重視する方向性が見えてきました。
一方、そのための国際的な支援体制をどのように構築するかについては、意見の相違が残りました。
特に議論に時間を要したのが、Global Coordination Entity(GCE)の位置付けです。GCEと地域・準地域の支援センターをどのように連携させるのか、その活動を今後SBIやCOPがどのように評価するのか、CBD事務局にどのような役割を持たせるのか、さらにその活動をCBDの予算で支えるのか、GEFなど外部の資金を活用するのか、といった制度設計と資金面を巡って意見が分かれました。
IISD-ENBによれば、地域・準地域支援センターの設置・運営まで資金支援の対象とする案や、生物多様性と気候変動の相互関係を踏まえて緑の気候基金(GCF)による支援を促す案なども議論されました。能力構築を強化するという方向性には共通点がある一方、「誰が支援し、誰が調整し、誰が費用を負担するのか」という具体的な仕組みについては、なお多くの論点が残っています。
夜まで続くコンタクトグループ
夕方以降も交渉は続き、夜には資金メカニズム、生物多様性の主流化、デジタル配列情報(DSI)のコンタクトグループが開催されました。
SBI7は、プレナリーで各国が立場を表明する段階から、COP17に向けて実際の勧告文を作り込む段階に入っています。
この日のグローバルレビューや能力構築の交渉を見ても、「GBFの実施を加速する」という大きな方向性には共通認識があっても、そのために各国にさらなる取組を求めるのか、それとも資金・能力構築などの実施手段をまず強化すべきなのかという点では、先進国と途上国を中心に立場の違いが見えています。
こうした違いを、COP17に向けてどこまで一つの文章にまとめられるのか。SBI7の交渉は、ここからさらに難しい局面に入っていきます。
国際自然保護連合日本委員会
会長 道家哲平
























