SBSTTA28の5日目は、ほぼ終日にわたり各コンタクトグループで集中的な交渉が行われ、夜のプレナリーでは各議題の進捗報告と、最初のCRP(Conference Room Paper)文書の審議が始まりました。会議も終盤に入り、多くの議題で文書全体の精査が終了し、残る政治的な論点をブラケット(未合意箇所)としてCOP17に委ねる方向性が見え始めています。
各コンタクトグループで条文調整が進展
午前中は、IPBES(議題4)のコンタクトグループが1時間開催された後、そのまま同じ会場で合成生物学(議題5)のコンタクトグループが午後まで続きました。一方、別会場では野生生物管理(議題6)のコンタクトグループが並行して開催されました。
午後は保護地域(議題7)のコンタクトグループが開かれ、その後はPMRR(Planning, Monitoring, Reporting and Review)の交渉が夜遅くまで続くなど、最終盤らしい日程となりました。
保護地域では新たな行動計画の議論が続く
保護地域のコンタクトグループでは、従来の保護地域作業計画(Programme of Work on Protected Areas:POWPA)に代わる新たな行動計画について、各行動項目の詳細な検討が進められました。
議論では、
- 先住民・地域コミュニティ(IPLC)の位置づけ
- 資金動員に関する記述
- 土壌生物多様性や菌類(Fungi)の視点の追加
などが個別に検討されました。
また、新たな名称として「保護・保全地域行動計画(Protected and Conserved Areas Action Plan)」とする方向で議論が進められましたが、その前提となる「Protected and Conserved Areas(保護・保全地域)」という概念をどのように定義するかについて各国の意見が分かれ、ブラケットにいれつつ、「Program of Work on Protected Area, OECM, Recognizing Indgenous and Tradtional Territories, where appropriate」となっています。これまで、POWPA(パウパ)と略していたのに、議長もパウ・・・どうしよう?みたいな苦笑を浮かべていました。そのまま素直にすると、POWPAORITTWA(パウパオリットワ)なのでしょうか・・・。
プレナリーで各議題の進捗を報告
20時から再開されたプレナリーでは、各コンタクトグループ議長から進捗報告が行われました。
議題3(PMRR)では、PMRRに関するコンタクトグループを3回開催し、ノンペーパーを複数回改訂した結果、大きく前進したことが報告されました。依然としてブラケットは残るものの、5日目夜の会合でクリーンテキストを目指す方針が示されました。また、モニタリング枠組みについてもAHTEG(専門家会合)の設置可能性などが検討され、こちらも最終調整段階に入りました。
議題4(IPBES)では、SBSTTA27から持ち越されている政治的論点が依然として残っており、一部はCOP17で最終判断する必要があることが報告されましたが、CRP文書まで作成が進みました。
議題5(合成生物学)では、4回のコンタクトグループを経て、勧告本文及び行動計画の全体的な検討が終了しました。将来の行動計画やストックテイク、他の国際機関との連携なども整理され、全体として完成度の高い文書となっているとの報告です。一方で、専門家会合の設置、将来の作業計画、評価手法などについては意見の隔たりが残り、ブラケット付きのままCRP作成へ進むこととなりました。
議題6(野生生物管理)では、3回のコンタクトグループを通じて技術的論点はほぼ整理され、文書全体の検討が終了しました。残るのは限られたブラケットのみであり、大きな進展が確認されました。
議題7(保護地域)では、生態学的連結性(Ecological Connectivity)の議論を優先して実施し、多くの論点は整理されたものの、一部には依然としてブラケットが残っています。また、23の行動目標ごとの行動計画についても順次検討が進められましたが、本文全体(Operational Text)の検討まではには至らなかったことが報告されました。
議題8(海洋・沿岸)では、EBSAや専門家会合の設置に関するガイダンスを中心に議論が続きました。BBNJ協定との関係など、COPレベルでしか解決できない政治的課題も残されており、多くのブラケットが維持されたままとなっていますが、全文を検証したという認識のもとCRP文書作成にまで至りました。
SBSTTAビューロメンバーを選出
プレナリーでは、新たなSBSTTAビューロメンバーの選出も行われました。
- アジア太平洋地域:UAE
- 東欧地域:セルビア
- ラテンアメリカ・カリブ地域:メキシコ
- 西欧・その他地域:フランス
- アフリカ地域:シエラレオネ
いずれも各地域から推薦され、慣例に従い拍手によって承認されました。
ブラケット付きのままCRPを採択
この日のプレナリーでは、海洋・沿岸及びIPBESに関するCRP文書の審議も開始されました。
通常であればプレナリーでも個別のブラケットを巡る交渉が行われますが、議長は交渉を行わず、未合意箇所をブラケット付きのまま維持した状態でCRP文書を採択しました。これは、SBSTTAでは技術的な論点整理を優先し、政治的な判断をCOP17に委ねるという近年の運営方針を反映した対応といえます。
5日目のポイント
SBSTTA28は終盤を迎え、多くの議題で技術的な検討は概ね終了しました。一方で、専門家会合の設置、将来の作業計画、BBNJ協定との関係、生態学的連結性など、政治的な判断を伴う論点は依然としてブラケットとして残されています。
この日のプレナリーでは、こうした未解決部分を無理にSBSTTAで決着させるのではなく、COP17で政治的判断を仰ぐという全体の方向性がより明確になりました。今後は残されたブラケットをどこまで整理できるかが、SBSTTA28最終日の最大の焦点となります。
国際自然保護連合日本委員会
会長 道家哲平























