SBI7の8日目となる8月11日は、これまでコンタクトグループなどで積み上げてきた交渉結果をプレナリーに戻し、COP17への勧告としてまとめていく作業が本格化しました。
合成生物学や名古屋議定書の評価、自治体参画、主流化など、多くの議題が採択あるいは採択に向けて前進しました。一方、資源動員などでは各国の立場の違いが改めて表面化し、COP17に残される課題も見えてきました。
コロンビアと熊本の地震被災者への思いからスタート
午前のプレナリーは、前日にコロンビア西部で発生した大規模な地震と、7月に熊本を襲った地震の被災者に思いを寄せるところから始まりました。
コロンビアの被災地域にはCOP16の開催地カリも含まれており、参加者の多くにとって身近な場所です。IISD-ENBも、相次ぐ災害が地域社会や生態系の脆弱性を改めて浮き彫りにしたと伝えています。
CHM・知識管理、CEPA、自治体参画を順次審議
午前のプレナリーでは、まずクリアリングハウスメカニズム(CHM)と知識管理について、前日から残されていた部分の検討を続けました。
特にCBD事務局への要請事項について文章を整理し、COP17からCOP18までの期間に知識管理に関する地域ワークショップを開催することなどについても意見が収れんしました。
続いて、コミュニケーション、教育及び普及啓発(CEPA)に関するCRPを修正・確認しました。その後、地方自治体・準国家政府の参画について審議しましたが、午前中には終了せず、残された部分は夕方のプレナリーで引き続き検討することになりました。
また、合成生物学については、これまでの交渉結果を反映したL文書が採択されました。これには、能力構築・能力開発、技術・知識へのアクセスと移転、知識共有を支援するテーマ別行動計画などが含まれています。
夕方、多くの議題が採択へ
夕方のプレナリーでは、午前から残されていた自治体参画について審議を再開しました。
都市部だけでなく人口密集地域や農村地域も視野に入れ、準国家政府、都市、地方自治体、慣習的・伝統的・コミュニティの制度などの能力を強化することや、生物多様性を考慮した空間計画、都市の生物多様性管理、生態系の再生や生態学的連結性などについて文章を確認し、勧告案が承認されました。
名古屋議定書の第2回有効性評価についても、残されていた一部の[ ](ブラケット)を外し、勧告が採択されました。
さらに、生物多様性の主流化についても文章を修正した上で承認されました。ただし、生物多様性の持続可能な利用を保全や経済・生産活動への統合とどのように結び付けるかなど、一部には未解決の論点が残りました。
能力構築・能力開発についても、これまでのコンタクトグループでの議論を踏まえて文書が整理され、L文書へと進みました。SBI7で合意できた部分を確定させながら、Global Coordination Entity(GCE)の位置付けや資金など、COP17でさらに検討が必要な論点を残す形となっています。
生物多様性教育―「COP17から使う」のか、「COP18で完成させる」のか
CEPAでは、グローバル生物多様性教育行動計画(Global Plan of Action for Education on Biodiversity)を巡る議論に注目しました。
一つの考え方は、現在の行動計画を「リビングドキュメント」として位置付け、今後も改善しながら、すでに活用を始めていくというものです。
これに対して、現時点ではあくまでドラフトとして扱い、COP17以降でさらに内容を改善した上で活用すべきだという意見もありました。最終的には、この問題についてCOP17で引き続き協議することになりました。IISD-ENBも、行動計画をどのように最終化し、実施に移すのかが議論になったと報告しています。
また、締約国に教育に関する取組を「要請する(urge)」文章についても、各国の教育制度は大きく異なることから、「適切な場合」「適用可能な場合」など、それぞれの国の状況に配慮する表現をどう盛り込むかが細かく検討されました。
資源動員―採択に向かいながらも、各国が立場を残す
この日の終盤でも特に緊張感があったのが、資源動員でした。
これまで長時間にわたる交渉を続けてきたものの、十分な議論の時間がなかった、あるいは多様な意見が残されているとして、多くの国が自国の立場をステートメントとして記録に残すことを求めました。
また、一部の国からは、それまでの交渉過程で削除された文章や脚注を復活させるよう求める意見も出されました。
サウジアラビアは、CRPについてパラグラフごとに確認することを求めました。これに対し、会場からは限られた時間の中で文書全体を採択する必要性が指摘され、最終的にCRP全体が承認されました。IISD-ENBも、このやり取りをこの日の資源動員審議の特徴的な場面として報告しています。
その背景には、資金供出者の裾野をどこまで広げるのかを巡る、これまでの交渉があります。
JUSCANZから示されたオプションBに対しては、ブラジルを中心に80か国以上がこれを削除するよう求める声明を出し、その後、新たなオプションDも提示されました。
この数日間、「2026年において資金を提供する能力を持つ国をどう考えるのか」という問題が繰り返し議論されてきました。SBI7で一つの文書をまとめることができたとしても、先進国による資金提供の責任と、資金供出者の裾野を広げるという二つの考え方をどう整理するかという政治的な問題そのものが解消したわけではありません。
「採択」は、必ずしも「論争の解決」を意味しない
8月11日は、多くの議題でCRPからL文書へと進み、COP17への勧告が次々と形になった一日でした。
一方で、この日の交渉を見ていると、文書が採択されたことと、その背景にある政治的な論争が解決したことは必ずしも同じではないことも分かります。
主流化では持続可能な利用や企業・経済活動への統合、能力構築ではGCEとその資金、CEPAでは教育行動計画をいつからどのように活用するのか、そして資源動員では資金提供の責任と供出者の拡大など、それぞれにCOP17でさらに議論すべき論点が残されています。
SBI7も最終盤です。ナイロビでどこまで合意を形成し、どの論点を[ ]付きの文章や各国の立場とともにCOP17へ送るのか。これまで積み重ねられてきたコンタクトグループでの交渉が、いよいよ明日一区切りを迎えます。
国際自然保護連合日本委員会
会長 道家哲平























