本格開幕を翌日に控え、準備が進むCOP17会場
2026年10月18日(日)、アルメニアの首都エレバンでは、生物多様性条約第17回締約国会議(CBD-COP17)の開会式が開催されました。COP17の本格的な会議は19日から30日まで行われます。
18日午前の会場は、まさに国際会議の開幕直前という雰囲気でした。展示ブースや各団体のパビリオンでは、まだ荷物や資材があふれ、関係者が急ピッチで設営作業を進めていました。世界各地から集まった団体が、それぞれの活動やメッセージを発信するため、最後の準備に追われています。
一方、会場では先住民族・地域社会の関係者による会合や、地域グループの準備会合なども開かれています。各国政府の交渉担当者だけでなく、自然保護団体、研究者、企業、ユース、先住民族・地域社会など、多様な立場の人々が集まり、翌日から始まる本格的な会議に向けて動き始めていました。
まだ設営途中の場所も多い会場ですが、これから2週間にわたって議論や交流が繰り広げられる舞台が、少しずつ出来上がっていく様子が感じられました。

アルメニアの文化とともに迎えた開会式
夕方から行われた開会式は、アルメニア国歌の演奏で始まりました。
続いて、COP17に向けて制作された映像が上映されました。一つは、世界が直面する自然の危機を、COP17を契機として保全と再生の物語へと変えていこうというメッセージを伝えるもの。もう一つは「Nature is in Our Culture(自然は私たちの文化の中にある)」をテーマに、生物多様性と人々の暮らし、文化との深いつながりを紹介するものでした。
アルメニアの伝統音楽と民族舞踊による歓迎のパフォーマンスも披露されました。太鼓や笛の生演奏に合わせ、男女がともに踊る舞踊や、男性たちが力強く手を打ち合わせる舞踊などが披露され、会場はアルメニアならではの文化に包まれました。
また、COP17に先立つ10月16日に開催された首脳級会合「Leaders’ Summit on Biodiversity」を紹介する映像も上映されました。

「約束を行動へ」― 開会式で共有されたメッセージ
開会式では、開催国アルメニアのニコル・パシニャン首相(Nikol Pashinyan)が参加者を歓迎しました。
パシニャン首相は、生物多様性は自然そのものだけの問題ではなく、人々の暮らし、持続可能な発展、そして将来世代を支える基盤であると強調しました。また、人類は生態系から切り離されて存在することはできず、自然保護には長期的な視点と責任、そして幅広い主体の参加が必要であると述べました。
COP17については、これまでの国際的な約束を具体的な行動へと転換し、2030年に向けた生物多様性の保全と再生を加速させる機会にしたいとの期待を表明しました。
続いて、アルメニアのアララト・ミルゾヤン外務大臣(Ararat Mirzoyan)は、地政学的緊張や経済的な不確実性が高まる中だからこそ、多国間協力が重要であると述べました。生物多様性条約を国際協調の重要な枠組みとして位置づけ、各国が違いを乗り越えて信頼を築き、共通の目標に向かって協力することへの期待を示しました。
生物多様性条約事務局のアストリッド・ショーメーカー事務局長(Astrid Schomaker)は、アルメニア政府による開催準備への謝意を述べるとともに、COP17を、多国間主義の力と、国際的な約束を行動に移すことの重要性を示す会議にしたいと呼びかけました。
また、COP17に先立って公表された世界の生物多様性の進捗報告書「State of Biodiversity Action」に言及しました。各国から提出された国別報告書などを基に、昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の実施状況や課題が明らかになっており、これを踏まえて今後の行動を加速させる必要があると述べました。

前回COP16の議長国コロンビアを代表して登壇した、ダビド・オラルテ・アマヤ環境・持続可能開発副大臣(David Olarte Amaya)は、科学、国際協力、地域社会の参加によって生物多様性保全を進めることができると強調しました。また、アルメニアとコロンビアが共同で立ち上げた、絶滅危惧種の回復に向けた国際的な連携「CARES」にも言及しました。
最後に、COP17議長就任予定のアルメニアのハンバルズム・マテヴォシャン環境大臣(Hambardzum Matevosyan)が挨拶しました。
マテヴォシャン大臣は、開催に向けた約2年間の準備を振り返り、相互尊重と開かれた対話によって各国の違いを乗り越え、将来世代のための自然保護を進めたいと述べました。また、アルメニアがCOP17に向けて提案している、モニタリング、山岳生態系、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に貢献する地域)、ポジティブ・インセンティブの四つのイニシアティブにも触れました。また、リーダーズサミットで発足したCARESへの幅広い参画を訴えました
いよいよCOP17の本格的な議論が始まる
開会式では、アルメニアの豊かな文化による歓迎とともに、「約束を行動へ」というメッセージが繰り返し語られました。
2022年に採択されたKMGBFは、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを目指しています。今回のCOP17は、その達成に向けた世界全体の進捗を初めてレビューする重要な会議となります。
会場では、まだ展示の準備が続く一方、世界各地から集まった人々が議論を始めています。ここエレバンで、どのような対話が生まれ、どのような行動につながっていくのか。IUCN日本委員会としても、現地の動きを伝えていきたいと思います。
国際自然保護連合日本委員会
会長 道家哲平
























