サイドイベント「People, culture and biodiversity: Advancing area-based conservation potential in Socio-Ecological Production Landscapes and Seascapes (SEPLS)」に参加してきました。このサイドイベントでは、里山とOECM(その他の効果的な地域をベースとする保全手段)の関係性やOECM関係のツールやガイダンス、日本・コンゴ民主共和国などの事例が紹介されました。地域で営まれてきた自然との関わりや保全活動をOECMという世界の枠組みと結びつけ、世界に向けてもその価値を伝えていく手段であるOECMについてお伝えします。

日本の事例も共有されていました

まず、OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)とは、国立公園などの法的な保護地域以外で、生物多様性の保全を主目的にしていなくても、生物多様性に資する管理がなされている地域の事をいいます。世界目標のターゲット3にて、生物多様性が効果的に保全されている地域を30%に増やすことが目標として掲げられました。30%の対象には、国立公園などの法的に保護された地域だけでなく、里山のような人の維持管理によって生物多様性が保全されている場所も含まれています。そのため、OECMに登録することで、生物多様性が保全されている場所として、世界に認知されることにつながります。

里山からOECMを見つけるには

時々、里山とOECMは、混同されることがありますが、両者は完全に同じものではありません。

里山は、自然と調和した農林業などの生産活動や、地域に受け継がれてきた知識・文化と結びついた地域を指し、一方で、OECMは、保護地域以外の区域で、生物多様性の保全に長期的かつ効果的に貢献している地域を認識するための枠組みです。

つまり、里山は地域の土地利用や暮らし、文化、それらの営まれている地域を表す概念であり、OECMは、里山のような保護地域以外の地域を生物多様性の保全に貢献している地域を認識するための仕組みです。

そのため、里山であることだけで、自動的にOECMになるわけではありません。

なぜ「里山=OECM」ではないのか

例えば、かつては薪炭林として利用されていた里山でも、現在は管理する人がいなくなり、竹や常緑樹が広がっている場合があります。

このような場所は、地域の歴史上、あるいは人間活動のある地域全体で見たときには、里山と呼べるかもしれませんが、森林の過密化によって林床に光が届かず、草地や湿地に依存する植物・昆虫が減少している場合、生物多様性の保全に長期的かつ効果的に貢献しているとは限りません。

反対に、里山の中にある水田やため池、雑木林などが、適切な管理によって希少な生物の生息地を維持している場合には、その区域がOECMの基準を満たす可能性があります。

例えば、農薬の使用を抑えた水田で、地域の協議会や農家が水路や畦の管理を続け、トンボ類やカエル類、水生植物などの生息環境を維持しているとします。この場合、地域の管理体制があり、保全上の価値が確認され、将来にわたって管理を続ける仕組みがあれば、OECMとして評価できる可能性があります。

このように、里山全体が一括してOECMになるのではなく、里山を構成する区域のうち、現在の管理によって生物多様性が維持・回復されていることがOECMとなる一つの基準になることがあります。

OECMとして認められるには、定められた基準に照らした評価が必要です。認識された区域について国際的なデータベースなどへの報告を行うことで、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の目標3への貢献として計上することができます。日本では、「自然共生サイト」という独自の制度を設け、登録された自然共生サイトのうち、保護地域に登録されている区域以外を国際的なOECMデータベースに報告を行っています。

里山とOECMの関係を学ぶための参考資料

このサイドイベントでは、里山とOECMの基本的な概念や定義、両者の関係性、レジリエンスを把握するための指標などについてまとめた下記ブックレットが発表されました。

■ ブックレット:Caring for our landscapes and seascapes

このブックレットは、里山のように、人々の暮らしや生産活動と自然環境が結びついた地域(SEPLS:社会・生態学的生産ランドスケープ・シースケープ)と、OECMの関係を理解するためのものです。両者の基本的な概念や違いに加え、OECMを見つけるための指標や、保全活動のモニタリングにどうつなげられるかがまとめられています。

また、SEPLSの「レジリエンス指標(Resilience Indicators)」を、OECMの特定や評価、モニタリングに活用する可能性が紹介されています。

レジリエンス指標は、地域の生態系や生産活動、文化、社会、経済などの状況を幅広く把握するための指標です。例えば、景観の多様性、生態学的なつながり、地域の人々が関わる生物種の多様性、資源に対する権利や社会的公平性、共同管理の程度などが、OECMの評価基準と関連しています。

資料ではそのほか、OECMとして認識されることによる国際的な認知度の向上、連携や現場支援、資金面での機会といった可能性にも触れられています。同時に、申請に必要な情報やGISデータの準備、継続的なモニタリングなど、地域にとって負担となり得る課題も整理されています。また、OECMとして登録するかどうかは、管理者や地域の権利者など、関係する主体が共同で判断することが重要とされています。

里山保全などの活動に携わる方にとって、地域ですでに行っている評価や管理を振り返りながら、OECMへの登録検討の際に参考になりそうな資料です。

国際的なツールについては、COP16の国際会議レポートでも紹介しておりますので、ぜひ合わせてご参照ください。

OECMに関するIUCNグローバルガイダンス

IUCN日本委員会事務局
稲場一華