SBI7の6日目となる8月9日は、午前にプレナリーが再開され、これまでの議論で一定の合意が得られた議題について、CRP(Conference Room Paper)をもとにした審議が進められました。一方、午後から夜にかけては再び複数のコンタクトグループが並行して開催され、資金、能力構築、グローバルレビューなど、意見の隔たりが大きい議題について集中的な交渉が続きました。

会議も後半に入り、合意できる部分は文章として確定させながら、残された政治的・制度的な論点をどこまでSBI7で解決し、どこからCOP17に委ねるのかが見え始めています。

「世界の先住民族の国際デー」――IIFBからのメッセージ

8月9日は「世界の先住民族の国際デー」です。このため、この日のプレナリーは、国際先住民族生物多様性フォーラム(IIFB)の代表からの発言で始まりました。

IIFBからは、生物多様性条約(CBD)が長年にわたり、先住民族及び地域社会(IPLCs)の権利や役割、伝統的知識を位置付けてきたことを踏まえ、近年、IPLCs、女性、ユースなどをまとめて「各国政府以外の主体(actors other than national governments)」と表現する傾向への懸念が示されました。それぞれが異なる権利や役割を持つことを、CBDの決定の中でも適切に認識する必要があるという指摘です。

続いて、主流化に関するコンタクトグループの共同議長を務めるメキシコから進捗が報告されました。これまでに2回のコンタクトグループを開催し、すべての実施に関するパラグラフ(Operational Paragraph)を検討したものの、事務局長への要請、能力構築、企業フォーラム、IPBES、GBFターゲット18などについて、なお未解決の論点が残っていることが報告されました。

午前:カルタヘナ議定書、合成生物学などをCRPで審議

午前のプレナリーでは、まず議題6「カルタヘナ議定書の評価・レビュー」に関するCRPを審議しました。

科学・技術的能力の強化などについて合意が進みましたが、資源動員については、GEF第9次増資やGBF Fundを通じた支援をどのように位置付けるかなど、一部の論点が残されました。

続いて、合成生物学に関するCRPを審議しました。能力構築・能力開発、技術や知識へのアクセス・移転などを盛り込んだ行動計画について大部分で合意しました。一方、実施手段については、先進国による資金提供の責任と、資金供出者の裾野を広げることをどのように両立して記述するかが議論となりました。

その後、名古屋議定書の第2回有効性評価に関するCRPの審議に入りましたが、この日の午前中には終了せず、途中で審議を終えました。

午後:再びコンタクトグループへ

午後からは、再びコンタクトグループを中心とした交渉となりました。

13時30分から14時30分までは、計画・モニタリング・報告・レビュー(PMRR)のパートBについて議論しました。ここには、今後実施される第2回グローバルレビューをどのように行うのかという議論も含まれています。

15時から17時にかけては、資金メカニズムと能力構築のコンタクトグループが並行して開催されました。

能力構築――GCEをどう位置付けるのか

能力構築のコンタクトグループでは、これまで合意できず[ ](ブラケット)に入っていた多くの文章について合意が形成され、ブラケットを外すことに成功しました。

一方、最後まで大きな論点として残ったのが、Global Coordination Entity(GCE)をどのように位置付けるのか、そしてその活動資金をどのように確保するのかという問題です。

能力構築については、単発の研修機会を増やすだけでなく、各国自身が継続的にGBFを実施できる能力を育てていく、長期的・実践的な「capacity development」へと進めていく方向性が共有されつつあります。

しかし、それを国際的に支える「調整機関」が具体的に何をするのか、地域・準地域の支援センターとどう役割分担するのか、そして誰がその費用を負担するのかについては、十分な共通理解が形成されているとは言えません。

結果として、GCEの位置付けと資金確保に関する重要な論点は、COP17で引き続き検討される形となりました。交渉を見ていると、国際的な能力構築を「調整する機関」の必要性や具体的な役割そのものについても、締約国間で理解に幅があることが浮き彫りになりました。

資源動員―「2026年の先進国とは誰か?」

17時から19時にかけては、資源動員のコンタクトグループが開催されました。

ここで興味深い議論となったのが、生物多様性資金の供出者をどこまで広げるのかという問題です。

CBDの資金を巡る議論では、条約採択時から、先進国が途上国に資金を提供するという構造が基本となってきました。一方、現在の世界経済は1992年当時から大きく変化しています。

そのため今回の交渉では、従来の「先進国」だけでなく、資金を提供する能力を持つ国々にも供出を広げるべきではないかという議論が提起されました。言い換えれば、「2026年現在、資金を供出する能力を持つ国とは誰なのか」という問いです。

これは単に資金量を増やすための技術的な議論ではありません。条約上の先進国・途上国の責任のあり方や、公平性、歴史的責任にも関わるため、資源動員交渉の中でも政治的に重要な論点となっています。

夜まで続くPMRRとDSIの交渉

19時30分からは、PMRRとデジタル配列情報(DSI)に関する交渉が続きました。DSIについては、共同議長の友(Friends of the Co-Chairs)の形式でも協議が行われました。

8月9日の交渉を見ると、SBI7で合意できる部分と、COP17で政治的な判断が必要となる部分との境界が徐々に見え始めています。

特にこの日、複数の議題を横断して現れたのが「実施のための資金を誰が負担するのか」という問いです。

カルタヘナ議定書、合成生物学、能力構築、資源動員と、扱っているテーマは異なります。しかし、先進国から途上国への支援というCBDの基本的な構造を維持・強化するのか、それとも現在の世界経済の状況を踏まえて資金供出者を広げるのかという問題が、さまざまな議題で繰り返し現れています。

SBI7も残りわずかとなり、COP17に向けて何を合意事項として送り、何を未解決の政治的課題として残すのかが、いよいよ明確になりつつあります。


国際自然保護連合日本委員会

会長 道家哲平