SBI4の六日目となる5月27日は、読み合わせを受けて作成された会議文書(CRP:Conference Room Paper)を6つ扱う予定が、最初のNBSAPのレビュー状況を3時間かけて完了できず、午後は、ジャンプして資金メカニズムのCRPを議論したのですが、12ページのうち5ページ目までしか進まないという極めて緩やかな進行をしています。小さいの含めて議題14のうち、一つもL文書にできないまま、残り二日となりました。

もしもしカメよ、どうしてこんなにのろいのか~

交渉会合で遅くなる議論のいくつかは、市民視点からすると、こんなに時間をかける価値があるのかと疑いたくなるものもあります。例えば、NBSAP改定では、

Noting with appreciation further the role of multi-stakeholder initiatives and coalitions supporting the implementation of the Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework, such as the High Ambition Coalition for Nature and People and the NBSAP Accelerator Partnership

「昆明-モントリオール生物多様性世界フレームワークの実施を支援するマルチステークホルダー・イニシアチブや連合、例えば、自然と人間のための野心国連合やNBSAPアクセラレーター・パートナーシップなど、感謝の意を表し、」という一文がありました。

動名詞(~ing)で始まるのは、前文といって、本文に入る前の前提を確認するパートだからです(つまり主メッセージではない)。

この一文をめぐる議論では、「例示としてHAC for Nature and Peopleなど、特定の国だけの仕組みを紹介するのは良くない、KM-GBFの実施を支援するマルチステークホルダーや連合の役割に感謝の意を表し、で止めるべき=HAC以下を削除」という意見が出ると「その通り、もしくは、我が国が加盟する別の取組みも書き込むべきだ」と言い出すと、「HACは環境大臣が宣言するもので政治的に重く、削除は容認できない」という意見が出ます。気を利かせた国が、「NBSAPの改定に最も寄与している動きだから原文のままでいいではないか」といった意見の交差が続きます。ある程度のところで「例えば、このリストに限るわけではないが(such as but not limited to)、 という表記ならどう?」とか言い出してくれる国もあるのですが、再び「やはり削除が良い」などと、言うやりとりをしました。インドの議長の方ものんびりした方なのか、なかなか議論の集約を宣言せずに、この議論だけで1時間以上を費やしました。

資源メカニズム(Global Environmnet Facility)については、GEFの資金の配分に対するガイダンスなどを議論する決定案だったのですが、そこに到達するまえに、資源動員戦略でもめている議論や表現(生物多様性ファンドで資源動員は十分か、足りずに新たな基金が必要か)に起因する議論を、ここでも議論し始めて、一度止まるとなかなか前に進まない状況でした。途中から「議長。他にもたくさん議題があるのに、こんなに時間を使ってどうする計画なのでしょう?」と国が言い出し「私の責任というよりは、締約国皆さんの合意をめざそうと頑張った結果です」と苦笑する場面もありました。

「せかいのうちで、おまえほど~」とまでは言いませんが、こういう進行も含めて、生物多様性条約自身の課題もまだまだあります。

国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平

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