SBSTTA6日目です。交渉官が担うテーマによって連日夜10時や12時まで続いたSBSTTAの最終日を迎えました。内容的には、満足とは言えないものがあったかもしれませんが、今回が、デイビット・クーパー事務局長代理の20回目のSBSTTAで最後のSBSTTAということで、大きな拍手の中でその長年の貢献が讃えられるなど感動する場面もありました。

この日は、午前にモニタリング枠組みと、海洋に関するコンタクトグループを開催した後、午後と夜に本会議で、CRP文書の検討を行い、全文書を採択しました。最後は時間切れという雰囲気で、ほとんど議論できていない文章などは、「異論があれば手を挙げて、上がったものはbracketをかける」みたいな進行となり、大きな課題も小さな課題も十把一絡げでCOP16に送るという進行でした。科学的技術的助言機関の名が泣く状況というのがこのところ続いている気がします。

以下で、各決定案のポイントを紹介します。

報告枠組み(議題3、Lx)

報告枠組みについては、主に、COP15で合意された指標を補完するバイナリーインディケーター(締約国への質問に対する回答を元に作り上げる進展を測る指標)を議論し、おおよそまとめました。その他の大きな議論は、指標の改善やメタデータの充実をどのようなプロセスで反映するか(あるいはしないか)といった議論です。2026年の2月までに、各国はヘッドライン指標に基づき、第7次国別報告書を出さなければならないことや、第8次国別報告書もいずれ検討することも踏まえて、一連の流れを検討しました。

途上国からは、指標が何度も更新されたり、新しい指標が生まれることに対応できなくなるのを懸念して、手法として固まったものは追加作業をしないことを明記したいという(報告作業の負荷を減らしたい)意見もありました。

今回作られたモニタリング枠組みは非常に膨大で、包括的です。国連・国際機関、各国や自治体間のモニタリングの連携、他の条約等の指標やモニタリングの動きと連動(情報提供や、主流化)、能力養成、技術移転させることを求める案をまとめました。

SBSTTAからの要請で、COP16に向けて、今回まとめられた指標関係の情報を更新することも行われる予定です。また、DSI作業部会(6月予定)との連動の中で、DSI関係のモニタリング方法や指標、モニタリング枠組みへの組み入れについて検討する予定です。

バイナリーインディケーターの議論に時間を費やし(コンタクトグループは4回開催)、本文はほとんど議論できてない状況にあります。

科学ニーズ(議題4、L3 )

SBSTTAとして、GBFの実施にあたり、CBDの既存のガイドラインやツール、他の機関が作成したツール等が十分であると結論付けるとともに、生物多様性を組み込んだ空間計画、生物多様性と汚染、持続可能な生物多様性を基にした活動、製品やサービス( Sustainable biodiversity-based activities, products and services that enhance biodiversity)については、更なる活動の必要性があるかもしれないとの認識となりました。

COP16決定案としては、科学技術協力センターの設立(独立したセンターではなく、既存の研究機関や団体等に役割を指名する仕組み。リストはこちら) 上記3議題を新たな作業に加えるかを交渉することになっています(そのためbracketがかけられています)。

IPBESとの連携(議題4、L2)

IPBESとの連携については、ファーストトラックアセスメント(迅速評価)作業について、一テーマの候補を、下記5つ提案しました。(最終決定は、IPBES総会で実施)

(a) 生物多様性と汚染 Biodiversity and pollution;
(b) 都市と生物多様性 Cities and biodiversity;
(c) 貧困と生物多様性 Biodiversity and poverty;
(d) 気候変動と生物多様性 Biodiversity and climate change;
(e) 権利ベース手法 Rights-based approaches,

また、今後のIPBESの成果物が出るタイミングに合わせて、SBSTTAやCOP等で検討する流れを確認しました。IPBESとの連携、IPBESへの各国による参加の呼びかけも行う内容の決定案になっています。

今後のIPBESは下記のような成果文書を作成予定です。
第11回総会(2024年(12月)):水・食・健康と生物多様性の相互関係(ネクサス評価)。社会変革
第12回総会(2025年):企業による生物多様性や自然の寄与への影響・依存度評価方法論
第13回総会(2026年):自然の寄与のモニタリング方法論
第14回総会(2027年):生物多様性を組み込んだ空間計画方法論
第15回総会(2028年):第2版地球規模生物多様性と生態系サービス評価
第16回総会(2029年):第12回総会で決定予定

合成生物学(議題5、L4)

合成生物学については、bracketが外れている合意点を探すのが大変といった文書の様相のため、主要論点をご紹介します。bracketは64箇所ついているようです。

背景は前の記事で紹介した通りですが、

  • ホリゾンタルスキャニングの継続やその内容:継続の可否についても意見が分かれています
  • 合成生物学に関する専門家会合の継続や改善:同じように開催するか、会合の名称「学際的(Multidieciplenary)専門家会合」、その役割(ToR)等
  • 合成生物学に関する能力養成:能力養成のためのアクションプランの作成や、この作業に関する事務局への要請内容
  • についても議論されました。

生物多様性上重要な海域(EBSA)について(議題8a)

本議題は3回のコンタクトグループが開かれ、ブラケットは残されたものの、特定プロセスのかなりの部分は整理がついた、という評価の様です。生物多様性条約締約国と、国連海洋法条約、あるいは、その下のBBNJ協定への参画を表明(署名)している国とそうでない国との交渉ポジションがあって、困難なものでした。

COP16決定案には、付属書にあるEBSAに関する運営方針(Modality)の採択の是非、EBSAに関する専門家会合の継続(専門家会合の役割(ToR)の是非、EBSA特定や改定作業の継続、国連海洋法条約やBBNJ協定との連動などの項目があります。

海洋・沿岸生物多様性(議題8b)

本議題は、EBSAの協議に引っ張られてほとんど議論できておらず、大部分の内容を先送りするような形になりました。海洋沿岸生物多様性及び島しょ生物多様性は、BBNJ協定あるいはプラスチック汚染防止条約(現在交渉中)など新しい仕組みが生まれている注目の議題です(そのため、それぞれの交渉の影響を受けているとも言えます)。

ほとんど議論はなかったものの、付属書(海洋と島しょの生物多様性に関する課題一覧)の変化は注目に値するかもしれません。締約国への照会を基に作った課題一覧は、SBSTTAを通じて、2倍近い数の課題が浮き上がりました(交渉していないので重複感があるものもありますが)。おそらく陸ではここまで出てこないので、世界各国が抱える海の課題感を生の声で見ることが出来るリストと言えます。

健康と生物多様性(議題9)

付属書にある、生物多様性と健康に関する世界行動計画(Global Action Plan on Biodiversity and Health)を集中的に議論しました。付属書のII~IVについては検討の時間を持てていません。

COP16決定案には、世界行動計画の採択を想定しつつ、その活用、国際機関等との連携、国内における検討と生物多様性フォーカルポイント(担当職員)やユースフォーカルポイントの指名を呼びかけるなどの内容になっています(行動計画と連動しているためbracketがかかっています)。事務局に対しては、情報集や国際機関との連携などを呼びかける案となっています。

付属書Iの生物多様性と健康に関する世界行動計画は、目的、生物多様性と健康の関係性、調整して取り組むことの意義、基本的な行動と、健康と生物多様性関係の行動を、GBFの23目標達成に組み込むための行動がまとめられています。GBFの全目標に言及されているため、大作です、

付属書IIは、この作業のモニタリングの要素をまとめています。IIIは、生物多様性が健康増進や疾病予防に寄与する要素、IVは健康産業に生物多様性を主流化させるためのメッセージとなっています。IIIとIVの付属書は興味深く、厚生行政への組み込みついての配慮となっています(交渉できてませんが)

 

国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家哲平

*今回の国際情報収集・発信業務は、経団連自然保護基金、地球環境基金の助成、ならびに、IUCN-Jへのご寄付を基に実施しています。このような情報発信を継続するためにも、IUCN-Jの活動へのご寄付をお願いします