2026年8月4日、ケニア・ナイロビの国連ナイロビ事務局(UNON)において、生物多様性条約(CBD)第7回実施に関する補助機関会合(SBI7)が開幕しました。

SBI(Subsidiary Body on Implementation)は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の実施、資金、能力構築、モニタリング、報告などを扱う会議です。COP17を数か月後に控えた今回は、これまで以上に重要な位置付けとなっています。

「進展が不十分」をどう行動に変えるか

開会では、SBI議長をはじめ、CBD事務局長アストリッド・ショーメーカー氏、COP16議長国コロンビアなどから挨拶が行われました。

発言では共通して、最新のグローバルレビューが示した「世界全体としてGBFの達成に向けた進展は十分ではない」という評価を、具体的な行動へと転換することの重要性が強調されました。また、現在の生物多様性危機は自然環境だけの問題ではなく、人々の暮らしや経済、さらには将来世代にも直結する課題であることが改めて確認されました。

そのため、COP17直前に開催されるSBI7は、資金や能力構築など「実施の手段」を具体化する極めて重要な会議であるとの認識が共有されました。

さらに、政府だけではなく、先住民・地域社会(IPLC)、地方自治体、NGO、市民、研究者、企業、ユース、ジェンダーなど、多様な主体の参画が実施には不可欠であることも繰り返し強調されました。

グローバルレビューをめぐる各国の議論

午前は、開会式後、GBFの進捗を評価するPlanning, Monitoring, Reporting and Review(PMRR)が主要議題となりました。

CBD事務局から議論の進め方が説明された後、PMRRに関する専門家グループ(AHTEG)の議長からグローバルレビューの概要が紹介されました。その後の各国発言では、多くの共通した論点が示されました。

  • グローバルレビューを、実施強化と野心引上げの政治的メカニズムにするのか、それとも、締約国主導・非懲罰的な集合的評価に限定するのか
  • 進展不足の原因を、国内の野心・政策・主流化の不足に求めるのか、あるいは、資金、能力構築、技術移転など実施手段の不足に求めるのか
  • 先住民、女性、若者、自治体、企業等を「ステークホルダー」または「rights-holders」としてどのように位置づけるのか
  • COP17から第2回グローバルレビューまでのフォローアップ、いわゆるYerevan Pathwayを具体的な制度にするのかなどを強く訴えました。

議論は午前中でファーストリーディングを終え、議長はPMRRに関するコンタクトグループの設立を宣言しました。議長は、SBSTTAで話し合ったところを蒸し返さず、実施に絞った議論にするよう各国に協調しました。コンタクトグループは、2つ同時に開催することができるのですが、このPMRRのコンタクトグループだけは例外とし、一人しか代表団がいない国も参加できるよう、PMRRコンタクトグループだけは、同時間帯に他のコンタクトグループは開催しないことが報告されました。このような運用からもわかる通り、グローバルレビュー(GBFの中間評価)は、COP17の最重要課題という位置づけです。

午後は、議題5DSI(デジタル配列情報)と議題4a資源動員が主要議題に

午後は、COP16で設立されたカリ基金(Cali Fund)を含むDSI(Digital Sequence Information)の制度設計に関する議論から始まりました。

今回の議論では、制度そのものを見直すというより、COP16決定をどのように実施していくかが中心の意見が多かったように思います。DSIについてもコンタクトグループが設立されました。

コンタクトグループでは、

  • 追加的な実施モダリティ
  • 新たなプラットフォームの可能性
  • カリ基金を含む制度のレビュー方法

などが重点的に議論するようにとの議長指示です。

資源動員では新たな資金メカニズムが焦点に

午後の後半からは資源動員(Resource Mobilization)の議論が始まりました。この議題も、コンタクトグループの設立が決定されました。

コンタクトグループでは、

  • COP16決定16/34を踏まえた新たな資金メカニズム(Financial Mechanism)の制度設計
  • 効果的な生物多様性ファイナンスの要素
  • 拠出国・拠出主体の拡大
  • COP18へ向けたロードマップ

などについて議論を進めるようにとの議長指示です。

サイドイベントの後、19時半から22時までPMRRのコンタクトグループが開かれました。

初日のまとめ

SBI7初日は、「グローバルレビュー」「DSI」「資源動員」という、COP17の成功を左右する三つの重要テーマの議論が本格的に始まりました。

各国の発言には、「世界全体の進展が十分ではない」という危機感が共通しており、その一方で、途上国は実施手段の強化を、先進国は制度の実効性や透明性の向上を重視する姿勢も明確になっています。

今後は、各コンタクトグループにおいて詳細な交渉が進められ、COP17に向けた勧告案の具体化が図られることになります。特に、資源動員やDSIをめぐる議論は、先進国・途上国間の利害が大きく交錯するテーマであり、今後の交渉の行方が注目されます。


国際自然保護連合日本委員会

会長 道家哲平