<筆者>
コンサベーション・インターナショナル・ジャパン
松本 由利子

今回のIUCNリーダーズフォーラムには、ユース世代のメンターという役割で参加させていただきました。スイス滞在の数日間、時間を共に過ごす中で見えてきたユース達の姿と、このような国際会議にユースが参加することの意義について、新鮮な感動を含めてお伝えさせていただきます。

ジュネーブ到着の夕方、市内を散策。鳥や水中の生き物に夢中になるなど、早速各メンバーの個性が見え始めました。

 

My Position Paperの作成

今回リーダーズフォーラムに参加するユースは、自分の関心事項やフォーラムで学びたいことをMy Position Paperにまとめました。作成を通じて考えの整理が出来ることや、英語でのコミュニケーションの下地になる等、作業は大変だけど得られるものも大きいです。

今回参加したユースメンバーのMy Position Paperを読んで、まず、誰もが日本の現状や課題に真剣に向き合っていることが伝わってきました。日本の自然保全は担い手の高齢化など危機的な状況ですが、こうして若い世代もその危機を自分の視点で読み替え、将来に対する考えを持っている事を心強く感じました。

また、渡り鳥など日本の生態系の豊かさ、アイヌ族と自然の関わり、ゲンゴロウと水田の保全、商業的農業への疑問と食の主権など、各人の関心事項や個性が見えて来たのが興味深かったです。

IUCN-J枠の参加者。みんな個性豊かで、自身の関心分野について、生き生きと話をしてくれたのが印象的でした

 

フォーラムにおける、ユースの収穫①:同世代からの刺激

今回のリーダーズフォーラムにユースが参加する最大の意義かつ収穫は、同じユース世代からの刺激だったのではないかと思います。

特にチェンジメーカーのピッチでは、同じ年代の若者が革新的な取り組みを行い、堂々としたプレゼンを行っている姿に、少なからずエネルギーをもらっていたと感じます。その証拠に、連日チェンジメーカーの話が熱を帯びて多く話題に挙がっていました。

また、今回のリーダーズフォーラムには、IUCN-J枠以外にも、ユースの保全団体COND、コンサル会社PwCの若手がそれぞれ複数名参加しており、日本人のユース間の存在がモチベーションを高め合う力になっていたと思います。他のユースを見ながら、英語力や経験や知識、もっと向上したい、そんな強い決意が誰の胸にも湧いているのが感じられました。

直接声は聞けなかったものの、もしかしたら自分がチェンジメーカーのピッチに挑戦してみたい、と考えたメンバーもいたのではないか、と思います。

ユース同士の交流、若者同士はすぐに打ち解けていました

 

フォーラムにおける、ユースの収穫②:多様な参加者との交流

もう1つ、欠かせないのが世界の多様な参加者との交流です。

フォーラムでは、セッションの間に長いコーヒーブレイクが設けられ、また初日には夕方参加者同士の交流会もありました。

参加者の多くがずっと上の世代なことや、英語でのコミュニケーションなど、ハードルは高かったのではないかと想像します。でも、数人で一緒に他国からの参加者に声をかけたり、自分から輪に入って行ったり、この時間で出来ることに挑戦する姿が見られました。

驚いたのが、1日目より2、3日目の方が、雰囲気に慣れてきたのか、より積極的に交流に参加している姿でした。今回参加の何名かは海外経験自体がほとんどないと聞いていたため、環境に適応する速さには感銘を受けました。この交流はかけがえのない経験であり、大きな成長に繋がったことを確信しています。

また、上の世代のセッションスピーカ―を見て、どの話が興味深かったか、どの話が印象薄かったか、リーダーとしてこういう人は望ましい/望ましくないなど、そんな話も度々聞かれました。今回の国際会議で見てきた様々なリーダーの姿は、若者たちに印象強く残っていくのではないかと思います。

なお、これは他人事ではなく、自分達の背中も後続世代たちは見ているという、気が引き締まる思いでもありました。

様々な話の中で、「理想を語るより、実際の行動の話の方が面白く印象に残る」という感想は多く聞かれました。上の世代の姿は、若者の道しるべにもなります。

 

ユースとの協働について考える

今回のフォーラムでは、先住民コミュニティとのパートナーシップというのが1つ共通した大きなテーマになっていましたが、その中で主張されていたのが、「先住民の声を聞くというのであれば、先住民族コミュニティに来て、先住民族の言語で話を聞いて欲しい」、という内容でした。

それは、日本のユースとの連携においても共通点があると思います。今回私はユースの中に入るような形、つまり年齢層的に言えばアウェーの状態でしたが、だからこそ、ユース世代の率直な意見を耳にすることができました。

日本の保全の現場においても、世代間コミュニケーションが課題としてよく取り上げられますが、既存の枠組みにユースをはめるのではなく、ユース達と行動を共にする中で新しい形を作っていく方法を模索していきたいです。

また、「ユース=将来世代」だから、と特別に負荷をかける姿勢ではなく、彼らと一緒に出来ることを広げて行きたいと思いました。

4日間行動を共にして、移動や隙間時間が、ユース世代との貴重なコミュニケーションの時間になりました

 

メンターとしての経験と反省

今回メンターという重要な役割をいただき、簡単ながらその振り返りを記します。

私自身は20-30代国際協力の分野を歩み、アフリカや東南アジア諸国の途上国経験があるため、開発の視点からGBFについて重要なことや、途上国の向き合う課題などについて、少しでも共有出来ればと考えていました。その点については、色々話を出来たかと思います。ただ、今回参加したユースの方々(IUCN-J枠以外の方も)には、今後海外の現場を自分の目で見てきて欲しい、フォーラムを経た今はその思いの方が強いです。

今回のフォーラムで話されていた、先住民族やローカルコミュニティの立ち位置や保全における役割は、実体験を通じて理解が深まってくるものだと思います。また、海外に出ることで、日本の特色や課題、世界に誇る素晴らしい点も再認識する機会にも繋がります。その経験を保全の原動力に変えていって欲しい、そうした思いも伝わっていれば幸いです。

なお、フォーラム前後に一度ずつ、個別にMy Position Paperの内容に関して対話出来れば、よりお互いに学びを深められたはずで、その機会を作れなかったことは大きな反省点です。次回への教訓として共有すると同時に、もし可能であれば、少し落ち着いた頃に改めてフォローアップの対話が出来ればと考えています。

最後に、今回誰よりも私自身がユース皆さんとの交流から本当に多くを学ぶこととなりました。貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。そして、またどこかで一緒に活動が出来る日をとても楽しみにしています!

ユース世代との交流は私自身にとってもかけがえのない、貴重な経験となりました。