10月11日から13日にかけてスイスのジュネーブで開催されたIUCNリーダーズフォーラムが終了しました。3日間のプログラムに込められた意味、世界がどこまで歩み始めたか、この会議を通じて見えてきたことをまとめたいと思います。

3日間のプログラムに込められた意味

最終日に司会からプログラムに込められた意図が説明されました。1日目は、昆明ーモントリオール生物多様性世界枠組み(GBF)の達成に向けて「誰が、何を始めたか」「誰が何をするべきか」を話し合った日でした。2日目は、GBFの達成に向けて「どのように(HOW)取り組むべきか」が話し合われました。3日目は、統合的実施が話し合われました。統合とは、生物多様性と気候変動を連動させて取り組む、先住民地域社会への敬意と意義ある参加を通した実施、ICT技術を活用したGBFの実施など様々な”統合”が含まれます。そして、いずれのテーマにおいても「ユースの革新的な発想や声を聞く」「パートナーシップ構築やネットワーキングを確保する」「情熱や周りを奮い立たせる(インスパイア)」ことが大事にされていました。このように捉えてみると、IUCNリーダーズフォーラムの今回のフォーマットは、世界各地でGBFの実施と人と自然の共生社会を真剣に考えるためにまず始めなければならない集まり(フォーラム)のひな型を提示したと考えても良いのだろうなと思います。

先住民モデルで活動家のZaya Guaraniさん。非常に過酷な人生を歩みながら、「今の」先住民の状況を伝えてくれた

つまり、日本で、誰が、どうやって、どんなテーマを同時にアプローチしていくか、実施に向けて様々な関係者を奮い立たせるようなイベントをどうすれば良いか、そんな場づくりを考えてみても良いかもしれません。

どんなピースが整っているのか?

リーダーズフォーラムに参加したことで見えたのは、GBF実施という壮大なパズルを組み立てる取り組みの、どんなピースが明確に形作られてきたか、あるいは、形が見えてきたか(ピースをくっつけていけるか)という点です。

企業が事業活動を通じてネイチャーポジティブな社会に寄与していくためのツールとしての情報開示枠組みの完成(TNFD)は9月に行われていました。今回はそれを踏まえて、今後のTNFDの活用や開示する当事者としての企業の変化、活用を後押しするマクロ経済からの変化(=中央銀行の生物多様性の捉え方が変わってきた)などが話し合われました。

30by30は日本でも比較的注目の話題ですが、その推進に寄与する(かもしれない)との期待が集まる「生物多様性クレジット」がまだまだ整理するべき事柄が多いことも含めて、議論されました。

ネイチャーポジティブの定量評価、測定方法、ネイチャーポジティブへの歩みを加速させるプラットフォームである「ネイチャーポジティブイニシアティブ」の動きも見えてきました。

オンラインツールを使って参加者の生の声を聞きながら進行

ここでも日本からの参加者としては、「日本ではどうか」を考える必要があります。「生物多様性」を日本の中央銀行はマクロ経済の担い手であるとして”自分たちの責任の範疇に入ってきた課題”と捉えているだろうか?日本でのプラットフォームは作れるのか、誰がプレイヤーなのか、誰がプラットフォームの事務局を引き受けるのか?そういった問いを立てて、一つ一つ作り上げていく必要があると感じました。

私自身が得た希望の一つは、独りぼっちで参加したわけではなく、今回このリーダーズフォーラムに日本から多数参加し、内容だけでなく、運営方法、ホスピタリティなど、それぞれの目で体験してくださったことです。

国際自然保護連合日本委員会

事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)