SBSTTA25が終わった午後にCOP15のセカンドパートの再開会合(COP15-2-2)がUNEP国際会議場で開かれました。COP15は、昨年の12月に開催したのでは?と勘違いされている方はこちらの記事をご覧ください。ごく簡単にCOP15-2-2の紹介をしつつ、SBSTTA25の特徴と成果を振り返りたいと思います。

COP15-2-2

COP15再開会合は、SBSTTA議長の順番が東欧地域のCOP15で選出する予定のビューロから選ばれるということになっている中で、地域会合のコンセンサスにロシアが反対し、ロシアはさらに欧州選出委員にも異議を唱えたことから、非常に珍しい「選挙」という形で、ビューロメンバー・SBSTTA議長を選ぶことになりました。また、COP16開催国ですが、COP15開催時点ではトルコがホスト国となったものの、2022年の地震災害による開催困難を表明して白紙となっていました。今回のCOP15-2–2では、別の国の立候補を促すとともに、ホスト国の表明がどこの国からもない場合は、モントリオールで2024年10月21日から11月1日にかけて開催することになることが説明されました。

SBSTTA25の成果

今回のSBSTTAでの決定事項は、「COP16の決定案」を提案(Reccomend)することが決まった、というものですので、手続きとしてはCOP16決定を待たないと、効果は発揮しないものとなっています。それでも、植物保全戦略のGBFに基づく改定、外来種に関する6つのガイダンスの合意など、GBFの交渉が難航したために後回しになった決定が動き出したことになります。

また、GBFの交渉で未だ欠けていた指標や報告等も、コンセンサスには至らなかったものの議論は前進しました。参加者数も794名(登録ベース)と、従来のSBSTTAの1.5倍近くと注目されていました。これを受け、GBFの実施の課題としてやはりビジネスや資金の話が出てくる次回SBSTTA26およびSBI4は、さらに、注目されると思います。

もう一つ特徴だったのは、これまでCBDで社会的な配慮の常套句は「including Indigenous people and local community」(先住民地域共同体を含めて)などIPLCへの配慮でした。それが今回GBFの行動目標22や23も踏めて、IPLC, Women and Youth(先住民地域共同体、女性、ユース)という一連の言葉が、定型のフレーズになりそうです。もちろん、”フレーズ”だけにとどめてはいけないのですが、世界では、意思決定や情報へのアクセスといった参加や関与のスタンダードに女性やユースが入ることが加速しそうです。これも、生物多様性枠組みが、女性やユースの参画を2030年の行動目標に設定した成果だと感じます。

SBSTTA25の残した課題

SBSTTA25が、コンセンサスをまとめられなかったもの一つに、気候変動があります(COP16決定案は、各国の意見を一旦全て反映させただけで、内容の精査は一切せず)。IPBESおよびIPCC双方のアセスメントレポート、ならびに両機関の合同ワークショップの結果から見ても、明らかに、気候変動と生物多様性の双方向の関係性を理解し、同時に取り組む必要があるにもかかわらず、生物多様性条約は、気候変動影響の最小化と、気候変動への適応を中心に議論するべきとの途上国の意見が強く全く折り合いを見せる雰囲気にありませんでした。IPBESのキーメッセージを、承認(Endorse)しようという意見に対しても反対してWelcome程度に留めようという主張も、科学技術的見地からの意見とは到底思えないもので、SBSTTAの存在意義を締約国自ら損なうようなもので、今後、SBSTTAはどうあるべきかという議論が出てくるかもしれません。

サイドにこそ、面白い動きが

2022年3月のジュネーブで開かれた前回SBSTTAはサイドイベントがありませんでしたが、新型コロナ感染拡大を乗り越えたこともあり、お昼も夕方もサイドイベントが複数開かれていました。いずれも、GBFを受けてどう実施を進めていくべきか、パトナーシップや、GBFのコミュニケーション戦略(ロゴ)や種の観点からGBFをどう達成するかといった具体化のためのツールが各種発表されました。SBSTTA25が、先送り課題や積み残し課題の対応をしていたのに比べると、非常にアクティブな動きです。例えば、種の観点からGBFをどう達成するかについては、IUCNのGlobal Speicies Action Planは、23の目標全てと種の保全行動を結びつけています。日本では、TNFD(行動目標15と関係)や自然共生サイト(行動目標3と関係)が注目されていますが、自然再生の手法共有、自然共生サイト含む30by30のパートナーシップ、GSAPなど、様々な機関が連携して、全目標の具体化が進んでいることは”サイド”イベントで多くの情報が共有されました。これの日本版(あるいは日本での対応)を、どう作り上げていくか、これから考えていきたいと思います。

国際自然保護連合日本委員会

事務局長 道家哲平(日本自然保護協会)