SBSTTA25の二日目が終わりました。予定していたスケジュールより議題の消化は遅いのですが、コンタクトグループの会合が開かれるなど、議論が本格化しつつあります。

植物保全戦略(継続)

前日午後の継続で、多くの国がコメントを行いました。昨日なかった意見としては、GBFの交渉でも話題になった食料安全保障に関する植物種やその原生種に関する取組みなどを追記したいという意見や、植物園における保全だけでなく、権利ベースやジェンダーレスポンシブの手法を組み込む必要があるなどの指摘がありました。

CRP(Conference Room Paper)文書が作成され、SBSTTAからの提言をまとめることになります

議題4 科学パネルからの報告書の検討

議題4は、IPBES評価書から考えるべきこと(Findings from the assessments)という議題で、、IPBESやIPCCの評価結果を踏まえて、SBSTTAとしてどう評価結果を活用するかを協議する議題です。

まず、IPBESに関する全体の動き、外来種評価、生物多様性価値評価、野生生物の持続可能な利用評価の3つのレポートについてそれぞれ紹介が行われました。それぞれの評価について、地球環境戦略研究機関(IGES)が日本語で解説や翻訳などを作成しており、参考になると思います。

Womenの席には、花が飾られています

IPBES3つの評価への反応

IPBESの評価やキーメッセージの扱いについて、締約国で少々距離感が異なりました。具体的には、IPBESのレポートやキーメッセージを歓迎(Welcome)するという表現と、採用する(Endorseなので直訳は裏書きする)という表現の違いで分かれていました。

少しそれますが、国際条約では、表現の強弱が非常に重要になるケースがあります。例えば今回のように、(主として条約の外部からきた)報告書や他の機関決定、活動を目的語にとる動詞があります。

Note(留意)は交渉官がそれらを読んでいない時(会議間際にでてきた、CBDとは異なる文脈から出てきたなど)、welcome(歓迎)は読んだ上で支持する場合、endorse(承認/採用)はさらに強く支持する場合の言葉です。

Endorseというのは日常では出会うことが無い言葉ですが、元々は、手形の裏書き(仮に手形が不渡りになった場合に、振出人に成り代わって、裏書人が、取引相手に金銭を支払う義務が生じるという責任を負い続ける行為)から生じており、歓迎よりも”自分のこととして受け入れる”という語感を持った言葉です。

その他の、語感の強さなどを表現した語彙集は、こちらのPDFで、見られます。
http://bd20.jp/wp-content/uploads/2012/10/Negotiation_wording_CBD.pdf

その他、IPBESとCBDで用語が少し異なるのでその統一を図りたいという意見や、IPBES成果の当事者意識と活用を求めること、情報を国のレベルにスケールダウンするのが難しいので、地域レベルでの活用方法の支援、脆弱な人々や環境正義のキーワードを強調したという意見、外来種のアセスメントを評価しつつ、アフリカは外来種に関して情報があまりなく、アフリカの状況が十分に反映できてないのではないかという感想から、研究や能力などデータギャップへの支援。ナショナルアセスメントへの支援などの発言がありました。

IPCC第6次総合評価書への反応

CBD/SBSTTA/25/9という番号で、「Findings from the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change and their implications for the work undertaken under the Convention」というタイトルの文章がまとめられています。

IPCC第6次総合報告書から、特に、生物多様性との関係の記述をCBD事務局が分析して、まとめた文書になっており、英語ではあるもの、非常に分かりやすい文書となっています。文書では、

  1. 気候変動の加速(大気へのGHGの放出)で生じる現象が、生物多様性に悪影響を与えていること、
  2. 生物多様性の損失(森林や泥炭地、マングローブの劣化・損失等)が、気候変動の加速につながること、
  3. 生物多様性の保全や再生が、気候変動の緩和(CO2の固定)や適応(自然災害リスクの緩和、干ばつの抑制)に寄与すること
  4. 気候変動対策の一部(再生可能エネルギーを自然豊かな場所で開発することなど)が、生物多様性の危機を加速させている

などの関係が事例を含めてまとめられています。概ねIPCCレポートへの歓迎する声がほとんどですが、一部の国が、これを受けたCBDの取組みとして、重複を避けるため、「気候変動の加速が生物多様性に及ぼす影響への対策」だけに焦点を絞るべきではないかという意見がありました。また、重要な意見として、IPBESとIPCCとの協働について明記したいとの意見もありました。

これはCOP15において、IPBESとIPCCの共同ワークショップの報告書、それぞれの総会の精査(国の賛同)を経てない報告書であるとして、歓迎ではなく、留意にとどまったということが過去あったことを考えてなされた発言なのだろうと思います。

ユース(GYBNを代表して)も本会議場で積極的に発言しています

議題5 外来種

外来種は、COP13以降、外来種の侵入経路(一般的なものから、特定の侵入経路)、管理、コミュニケーションに関して、専門家会合を開催し、オンラインフォーラムや、ピアレビューを通じて6つの付属書(一覧は下記)を作成しています。COP15で採択を目指したのですが、協議の時間が不足という判断で、COP16に先送りしました。

SBSTTA2日目の午後のプレナリーでは、この付属書の扱い、及び、今後のIASの作業について議論しました。

多くの国が”そもそも自発的なガイドラインである”との認識のため、付属書の中身を交渉するのを避けようという意見が出されました(協議するならコメントがあるとも)。少数の国が、付属書の内容に注文を付ける場面もありました。また、IPBESのキーメッセージに言及することを求める提案もありました。その他、世界や地域レベルでの国際協力の推進、普及啓発、能力養成の重要性を指摘しました。

  1. 付属書 I 侵略的外来種の管理に最適な費用便益、費用対効果、多基準分析手法
  2. 付属書 II 生きた生物の国境を越えた電子商取引に関連する追加リスクとその影響の特定と最小化
  3. 付属書III 気候変動やその他の地球規模の変化から生じる潜在的リスクの防止に関連する侵略的外来種の管理
  4. 付属書IV 侵略的外来種の導入が社会経済的・文化的価値に及ぼす潜在的影響のリスク分析
  5. 付属書V 侵略的外来種の管理を支援するデータベースの妥当性
  6. 付属書 VI 侵略的外来種管理に関する追加アドバイスと技術ガイダンス

最終的には、”できるだけ最小限の修正にすることを意識しつつ”付属書の修正を行うためのコンタクトグループの設置が宣言されました

議題6 持続可能な野生動物管理

生物多様性条約では、野生動物管理の持続可能な利用については、比較的古くから議論をしてきましたが、傾向として、アフリカ大陸などで地域人々のたんぱく源として必要とされてきた”陸生の野生動物”を想定した食肉利用についての取組みやガイドラインを蓄積してきました。

しかし、IPBES持続可能な利用に関するレポートを受けて野生動物だけでなく、植物やキノコなど野生生物や海生生物、ペットやエキゾチックアニマル等多様な利用とそれによる自然界へのインパクトの大きさを検討する必要があるとの認識が高まっています。

そこで、Collaborative Partnership on Sustainable Wildlife Managementと共同して、CBDとして”補完的なガイダンス”が必要ではないかという問題提起が成されている議題です。補完的ガイダンスが必要かもしれないテーマ案とされているのが下記になります。

  • (a)持続不可能な狩猟、特に個体数増加率の低い種や狩猟が適切に管理されていない地域での狩猟
  • (b) ペット取引のための持続不可能な陸生動物の捕獲
  • (c)世界の特定の地域における持続不可能な、あるいは部分的に持続可能な小規模漁業。
  • (d) 特にウミガメ、ウミヘビ、海鳥、サメ、エイ、チーマー、海洋哺乳類の混獲による漁獲死亡
  • (e) 特に世界の特定地域における破壊的な伐採行為、違法伐採及び関連取引
  • (f) 観賞用種の野生標本の密猟と、いくつかの植物群(特にサボテン、ソテツ、ラン)の持続不可能な採集
  • (g) 持続不可能な慣行をもたらす可能性のある新技術

このリストを受けて、リスト項目を増やそうという提案をする国もあれば、リストの修正(例えば、(b)について、ペットは、陸生だけでなく海生もあるとの意見)、既に他の国連機関等でガイドが作られているものもあり、「更なるリストの精査が必要」「優先度の設定が重要」「GBFの実施の視点から大きく足りないテーマに絞るべき」等の懸念や改良を主張を展開する国もありました。

補完的ガイドの必要性やテーマの是非という上記の議論に加え、補完ガイドを作る場合には、「他の機関との協働や調整(重複回避)」「ユーザーフレンドリー」「IPLCへの配慮」など重視すべき事項などを指摘する意見もありました。

ガイドラインだけでなく、モニタリング、技術移転、資金、能力養成や地域レベルの協力など、指針以外の重要性を指摘する意見もありました。

NGOからは、アメリカとオーストラリアしか、CITES対象外の生物の国際取引データの公開をしていない。つまり、野生動物の利用の持続可能性を高めるために、圧倒的に標準化された情報が欠けていることを指摘しました。また、ヘッドライン指標も、漁業資源だけなので、生物の持続可能な利用のほとんどを実際評価できない状況になっているなどの大きな課題の指摘を行っていました。

国際自然保護連合日本委員会

事務局長道家哲平(日本自然保護協会)