生物多様性条約第25回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA25)が、ケニア・ナイロビにある国連環境計画(UNEP)本部で始まりました。協議事項が多いことから開会式をさっと終え、実質協議にすぐに入るなど、先週のIUCNリーダーズフォーラムとはまた雰囲気の大きく異なる会議です。初日は、昆明モントリオール生物多様性世界枠組み(GBF)の実施の仕組みに関する議題(議題3)の関連議題(a)~(d)を扱いました

議題3-(a) 指標

指標については、”保護地域の面積”のような統計があり、明確なものは比較的成果を測るのが容易のため、いくつかのヘッドライン指標がCOP15で採択されました。しかし、必ずしもそういう統計が整備されたものだけで、行動目標を設定したわけではありません。

そこで、COP15でも議論し、COP15の決定を基に設定した専門家会合(AHTEG)がこの間開催されています。そこでは、指標がない行動目標の指標づくりの解決策として「~の施策を保持している国の数」という新しい指標を設定し、その国の数を「該当する、部分的該当する、該当しない」といったYES/Noで各国に回答してもらうことで、実施状況を確認するという提案がなされています。このような指標の開発手法(バイナリー(二進法)指標)について検討することがSBSTTA25の議題になっています。締約国からは、このバイナリー指標という手法について基本的にはポジティブな意見が出ましたが、いくつかの要望が出ました。

要望としては、

  • ヘッドライン指標に集中すること
  • 可能な限り質問の数を減らすこと
  • 質問や回答の理解や仕方が共有されるようなガイダンスの作成
  • 各国が求められる国別レポートとの重複回避
  • バイナリー指標だけではなくAHTEGに依頼した不足している指標(ゴールB,C,Dや自然再生(行動目標2)など)の作業の推進

です。また、具体的な質問内容について、意見もありました。

例えば、生物多様性に配慮した空間計画という行動目標1を例にすると、「生物多様性に配慮した空間計画はありますか?」だけではNOとなりますが、「生態系毎の生物多様性に配慮した空間計画はありますか?」という設問にすると、答えとして「陸はあるが、海はない」という回答が出てくるようになります。

「海の空間計画の進捗が悪いのが明らかになれば、それについての途上国支援を検討できる」といった次の動きにつながります。つまり、シンプルで数の少ない質問にするか、その後の行動を見据えより詳細で質問数が多くなる質問かのバランスが、大きな論点となります。

自治体の取組み推進を訴える自治体代表(愛知県)

オブザーバーからは、NGO・ユース・IPLC・ジェンダー・自治体からはそれぞれのセクターの意義ある参加が行われているかどうかや公正の観点からの質問項目に入れるべきとの意見が出されました。

バイナリー指標だけではなく、これからも作業を継続する指標に関する専門家会合の取組みへの要望も続きました。

この議論をより細かく検討するためコンタクトグループの設立をし、チェコとサンタルシアを共同議長に指名しました。オブザーバーの参加も歓迎とのガイダンスがありました。

議題3(b) 中間レビュー

議題3の(b)は、GBFの中間評価に関する議題です。

COP15で決まったGBFの実施の仕組みの一つとして、実施の中間のCBD-COP17で「Global Review」を行うというものがあります。気候変動枠組み条約のグローバルストックテイクのように各国の取組み(NDC)を集約して、世界全体で設定した目標にどこまで到達しているかを評価する仕組みがイメージされています。

この「グローバルレビュー」をどう実施すると良いかについて、事務局が用意した文章をたたき台に議論されました。

論点は、誰が、どのようなプロセスで、どんな情報を基に、中間評価文書を作るか。アイディアとしては、IPBESのような丁寧な文章内容の絞り込みプロセスや、CBD内に設立する専門家グループへの意見、参考にしたい情報と参考情報から除外したい情報などの注文が付きました。SBIとSBSTTAの役割分担についても議論がされました。

誰が

専門家会合を設置する案が提示され、概ね合意の方向性が見られました。ただ、専門家会合の作業指針(ToR)や構成員の作りかたについてはコメントを出す国がありました。特に先住民地域共同体、ジェンダー、ユースの参画を主張する声がありました。

どのようなプロセスで

SBSTTAとSBIで引き続き役割分担を検討しながら行う意見が多かったように思います。IPBESのレポート作成やパリ協定のストックテイクレポートの良い点を取り入れようという意見もありました。
その他、フォーラム(集まり)の実施や、国別報告書や権利保持者やステークホルダーの能力養成を求めることも一部ですがありました。

どんな情報を基に

国別報告の他に、IPBESの科学評価、他の生物多様性関連国際条約・国際機関のGBF実施状況に加えて、先住民地域共同体や政府以外の多様な主体による貢献を組み込む事の重要性を指摘する国もありました。
なお、生物多様性の状況についてはIPBESの報告を中心にするべき、生物多様性(Outcome)ではなく、GBFの実施状況(InputやOutput)に焦点を当てるべきという意見が多かったように思います。
途上国からは、例えば30by30の実施状況だけでなく、先進国から途上国への資源供給や技術移転などのゴールDや「実施手段Means of Implementation」の評価が非常に重要だとの意見が集中していました。
IUCNは、Nature Contribution Platformの情報も組み込んでほしいとの提案がありました。

グローバルレポート

これまで、生物多様性条約では4年くらいごとに、地球規模生物多様性概況(Global Biodiversity Outlook)という文章がありました。そのため、名称は、GBOのままで良いのではないかという意見も出ました。

意見も多数に分かれていることから、コンタクトグループの設立が宣言されました。

議題3(c) アプローチ

議題3(c)は、GBFの方向性と、過去の生物多様性条約で設定した作業プログラム(PoW:Programme of Work)やガイダンスとの差異を、条約事務局が迅速評価(Rapid review)をした上で、今後の方向性を検討する議題です。

アフリカは、迅速評価だけでなく、詳細な評価をしてほしいという意見が出されました。土地再生のガイダンスと、海のOECMのガイダンスを急ぎ作ってほしいなどの意見もありました。そのうえで、詳細な検討を進めるワーキンググループを設立してはどうかという意見も見られます。

カナダや先進国は、評価ばかりしては実施がおぼつかない。GBFの実施に当たって何か重要な漏れ(ギャップ)があるかを探し、緊急に対処すべきガイダンス作りなどに絞った方が良い。詳細な評価は継続審議のような形で後回しでも良いといった意見が大勢だったように思います。

上記2つの議題でコンタクトグループを設置したこともあり、この議題では、コンタクトグループではなくCRP文書を作成し内容を詰めていこうという進行が宣言されました。

議題3-(d) 植物保全

議題3(ⅾ)は、植物保全戦略になります。植物保全のためのグローバルパートナシップ(Global Partnership for Plant Conservation)にCOP15が支援を依頼する形で、GBFに基づく世界植物保全戦略の更新版が起草され、その内容の精査を行い、COP16での採択を目指しています。

改訂版世界植物保全戦略は、GBFの各目標に対して、植物保全の観点からどう取り組むかを整理した内容になっています。

例えば、30by30を掲げる行動目標3を例にいうと、

  • 3 (a) 植物種とその保全にとって重要な地域が確実に特定され、保護地域やその他の効果的な地域ベースの保全措置の中で適切に連結され、代表されるようにする。
  • (b) 植物多様性にとって重要な地域の統合管理計画を策定し、それらの地域が効果的に文書化され、保護され、監視され、持続的に管理されることを確実にするためのプログラムを実施する。

などの「補完的な行動」を全23の行動目標毎に設定を目指しています。

論点としては、改訂版植物保全戦略の中身そのものと、その戦略に対して、CBD加盟各国がどんな取り組みをするべきかという決定本文の中身になります。

遺伝的多様性の確保や、穀物など食料生産に関与するような原生種の多様性、改訂版植物保全戦略のモニタリングのあり方、IPLCや伝統的手法の視点の組込みなどの要望が出ましたが、まだ発言したい締約国が控えた状態で、初日のSBSTTA25は終了しました

国際自然保護連合日本委員会

事務局長 道家哲平