昆明・モントリオール ターゲットについて

昆明モントリオール生物多様性世界枠組み

生物多様性条約第15回締約国会議で、昆明-モントリオール生物多様性世界枠組み(Global Biodiversity Frameworkの頭文字GBFと国際社会で略されることが多いです)が、採択されました。愛知目標に代わる新しい世界目標であり、愛知目標を基に作成されたSDGs14.15のアップデートと言える国連目標です。

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4年にわたる事前交渉と、COP15の2週間の深夜に及ぶ交渉にはIUCN-Jも深く関り、そのポイントなどを報告会や執筆、講演対応を通じて、NGO、企業、自治体と広く伝えてきました。そのポイントを紹介します。

POINT 01

人と自然の共生を具体化
 2050ゴール

生物多様性条約COP10で、2050年のビジョン(将来像)として「人と自然の共生」を目指すことが合意されました。GBFでは、この将来像をより具体化するために、生物多様性条約の3つの目的である保全、持続可能な利用、利益配分、そして実施のための資金や手法の4つの視点で具体化した2050年ゴール(到達点)を描きました。保全や回復に取り組んだ先にどういう世界を描いているかが表現されています

POINT 02

ネイチャーポジティブ

人と自然の共生を実現するために何をするべきか?その問いへの答えを協議する中でNGO中心に提案され、自然と多くの関係者に共有されていったのが、GBFの中で、2030年ミッションの章に掲げる「生物多様性の損失を反転させ、回復させる」を略したネイチャーポジティブという言葉です。 日本だけでなく世界でも、私たちの社会は環境配慮とか、環境に優しいという言葉を謳いながら、マイナスをゼロに近づける(つまり、マイナスは生まれる)ことで良しとされてきました。例えば、日本の環境影響評価制度などを想像してもらえるとわかりやすいです。
しかし、世界ではこの考えでは不十分として、ポジティブ、つまり、自然の回復力をもっと後押してプラスを生み出すところまで目指すとしました。

既に、欧米あるいは日本のNGOや企業も「ネイチャーポジティブ」について賛意を示し、その実現への宣言を始めています。注意しなければならないのは、。言葉だけのネイチャーポジティブで終わらぬように働きかけていくことです。IUCN-Jのネイチャーポジティブイニシアティブ(仮)は、このような課題意識で活動する世界のイニシアティブと連携して活動しています。

POINT 03

ネイチャーポジティブを実現するための「23の行動目標」

GBFでは、ネイチャーポジティブを実現するために、2030年までに23の世界行動目標を設定しました。23の行動は、生物多様性の5大危機要因に対処するための8つの行動、生物多様性を保全し、持続可能な利用を進めながらSDGsで達成を目指す社会課題(貧困、食、安定した自然環境、都市の健康、公平な社会)解決にも寄与するための5つの行動、上記13の行動を支えるツールや解決策・実施体制を整える10の行動、という3つの柱からなります。

この中には、環境省が力を入れている30bby30(サーティバイサーティ。陸と海の30%を保護する)や、企業が関心をもつ自然関連情報開示(TNFD)を推進することも目標に位置づけられています。大事なのは、それ以外の21の目標もネイチャーポジティブンのためには欠かせないということです。ネイチャーポジティブに向けて取り組み始めることが重要ですが、IUCN-Jのような専門的なネットワークが力を発揮し、「全体としての進捗」を世界の情報とも照らしながら考えられるよう、日本での展開を進めたいと思います。

POINT 04

枠組みに含まれる他の要素

今回、~目標とは言わず、枠組みという表現を使っています。それは、目標だけが合意されても絵に描いた餅で、目標達成のための「資金」「成果を測る指標」「世界全体で評価するための報告と評価」「途上国を中心とした能力養成」などの実施を支える仕組みも重要です。生物多様性に悪影響を持つ補助金を探し、悪影響の無い形に改革する(目標金額、5000億ドル)、生物多様性の保全に関して2000億ドル/年間の資金を作り出す。そのような資金が円滑に回るよう「基金」を創設するなども世界枠組みを形作るものとして検討されました。
資金については、適切に資金が回るような中間団体の役割が非常に重要で、この分野でも、IUCN-Jは2030年に向けて新しい取り組みを展開していきたいと考えています。