
明日から開幕するIUCN世界自然保護会議(WCC:World Conservation Congress))を前に、アブダビの会場はすでに活気に満ちています。広大な展示ホールでは、大型パネルやブースの設営が急ピッチで進み、電動ドリルの音やスタッフたちの呼び声があちこちから響き、国際会議らしい緊張感と期待感が漂っています。
その一方で、すでに動き出しているプログラムもあります。フィランソロフィーサミットでは、民間の資金が自然保護をどう支えるかをめぐって白熱した議論が交わされ、ユースサミットでは若いリーダーたちが未来への政策決定に強くかかわる方策を語り合い、先住民・地域共同体サミットでは、地域の知恵をどう世界の行動に生かすかという深い対話が続いています。フォーラム・会員総会に先立ち、すでにIUCN世界自然保護会議が動き出していることを肌で感じます。
多くの参加者は、アブダビならではの魅力も楽しんでいます。世界的に有名なシェイク・ザイード・グランドモスクを訪れ、その壮麗な建築と静謐な雰囲気に感動したり、砂漠や湾岸の自然に触れるエクスカーションに参加して、気分を盛り上げています。国際会議直前の“出会いと交流の旅”で、翌日からの議論のエネルギーを高めているようです。
私自身にとっても、この前日は特別な一日となりました。長年オンラインでやり取りを重ねてきたIUCNスタッフや各種専門委員会のメンバーと対面で握手を交わし、来年のグローバルネイチャーポジティブサミットを共催するNPI(Nature Positive Initiative)の主宰者、マルコ・ランベルティーニとも”対面で”久しぶりに会うことができました。互いにこれからの10日間がもつ重要性を改めて確認し、力強いエールを送り合いました。
設営の喧噪と議論の熱気、4年に1度の同窓会といった雰囲気と、新たな出会いというないまぜの雰囲気――そのすべてが、この4年に1回開催される世界自然保護会議の幕開けにふさわしい前日の空気を作り出しています。ここから10日間、世界中の人々が自然と共に歩む未来を描くために集い、語り合い、行動の糸口を紡いでいく。その始まりの瞬間に立ち会えることに、心からの高揚を覚えています。
国際自然保護連合日本委員会 会長 道家哲平