SBI6の2日目(2月17日)は、「ファーストリード」から少しずつ「交渉モード」への移行という様子でした。初日に続き、実施関連の重要議題のファーストリードが進みました。この日の中心となったのは、以下の5議題です。

  • 能力養成(Capacity-building and development / TSC)
  • 国際協力(Inter-organizational cooperation)
  • ABS(名古屋議定書:Specialized International Instruments)
  • 会議運営改善(Effectiveness of meetings)
  • CBD事務局の運営改善(External functional review)

また、2日目はファーストリードの後、PMRR(Planning, Monitoring, Reporting and Review)に関するCRP文書の一部について、プレナリーで具体的な文言協議が行われたことも特徴的でした。

PMRRの議論では、特にNBSAP(生物多様性国家戦略・行動計画)の改定(締め切りはCOP16まで)や、第7次国別報告書(7th National Report)の提出(2026年2月28日まで)に関して、期限通りに提出し、提出された情報がグローバルレポートに確実に反映されるよう、スケジュールを厳守するべきだとする主として先進国側の意見と、技術・資金支援が不十分であるため作業が遅れている国が存在することを決定文書に明記するべきだとする途上国側の意見の間で、表現をめぐる議論が長く続きました。

このやり取りは、PMRRが単なる報告手続きの議題ではなく、資金メカニズムや能力養成とも密接に結びついた議題であることを、改めて示したと言えます。実施の現実は、途上国の間でも多様性があり、小島しょ国などは今回全議題に対してグループの意見をまとめて発表を行っていました。

能力養成:争点は「追加分析」か「現場支援強化」か

能力養成議題(ターゲット20に直結)は、文書上は技術的に見えますが、実際には制度設計とリソース配分に関わる論点を含んでいます。

特に、以下の論点が今週の焦点になりそうです。

  • 事務局が追加のグローバル分析を実施するべきか
  • 地域支援センター(TSC centres)をどのように強化するべきか
  • 2029年の独立評価(ToR)を「採択(adopt)」するのか「歓迎(welcome)」に留めるのか

提出意見を見る限り、各国の立場は概ね次のように分かれています。

  • アフリカなど:分析強化を支持(支援を引き出す根拠にしたい?)
  • カナダ・IUCNなど:重複、遅延、リソース浪費を懸念
  • EU・ブラジルなど:条件付きで支持(設計と現実性が重要)
  • 日本:有用性は認めつつ、文言の強さ(urge)やToR採択には慎重

この議題は「何を事務局タスクとして残すか」が焦点になると考えられます。

国際協力:コンタクトグループ設置へ

国際協力(Inter-organizational cooperation)は、2日目の中でも意見の幅がありそうな議題でした。

  • リオ条約シナジー(CBD-UNFCCC-UNCCD)
  • BBNJ(公海生物多様性協定)との連携
  • OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)との協力
  • 科学パネル間連携(IPBES、IPCC、汚染パネル等)
  • UNDRIP、IPLC、SB8jとの関係

このように、CBDのマンデートを越えうる境界領域が多数含まれるため、提出意見でも方向性が割れていました。

CBD単独ではGBFの実現はしないので連携連動を図りたいという大きな意見はありつつも、国連海洋法条約公海生物多様性協定や、人権課題など国によって距離感がある議題との連携、少し踏み込んだものでリオ3条約間で共通の報告枠組みの構築という各条約の仕組みに踏み込んだ意見、さはさりながら事務局にかかる労力とのバランスを意識した発言がありました。

この結果、この議題はプレナリーでCRP文書としてまとめるのではなく、ノンペーパーを起点に、コンタクトグループで文言交渉を行う流れになりました。コンタクトグループ(Contact Group)とは特定議題を集中的に協議する場として議長が設定する会合をいいます。言語は英語のみ。中継もなされないほか、その場でどの国がどんな発言したかを公開することは控えないといけません。

ABS(名古屋議定書:SII):こちらもノンペーパーをもとにコンタクトへ移行

ABS議題(名古屋議定書4条4項:Specialized International Instruments)も、2日目に交渉フェーズへ移行しました。この議題は法的には、次の一点に収れんします。

Specialized International Instruments(SII)を誰がどう判断するのか

SIIとは、名古屋議定書が遺伝資源へのアクセスと得られる利益の公正公平な配分に関する包括的な協定でありつつも、特定分野(例:食料・農業、病原体、公海など)では、ABSを一般ルール(名古屋)で一律に当てるより、目的に即したルール(SII)で運用した方が合理的な場合があり、そのようなSIIは名古屋議定書の対象外とする制度です。国際条約間の調整においては必要な制度ですが、SIIとされるものが増えると、議定書の空洞化が起きます。

議題文書は、3つの選択肢(Option A/B/C(COP-MOPによる正式認定か、各国判断か、自己宣言か))を併記していますが、提出意見を見る限り、各国の立場は以下のように分かれています。

さらに、名古屋議定書Article 10(地球規模多国間利益配分メカニズム)との関係や、DSI(デジタル配列情報)の制度分断への懸念も絡み、短時間で合意できるテーマではありません。

このため、ABSも国際協力と同様に、ノンペーパーが作成され、コンタクトグループで夜間交渉が行われました。

会議運営改善:SBI6の「裏テーマ」として地味に存在感

2日目には、CBDの会議運営改善(Effectiveness of meetings)も扱われました。この議題は保全の実務ではなく、交渉を回す「仕組み」を改善するテーマであり、KM-GBFの実施局面に入ったCBDにとって、非常に重要です。

文書では、すでにSBSTTA27やSB8j-1で試行された工夫として、以下が整理されています。

  • 事前の進行設計(scenario notes)
  • 共同議長候補の事前研修
  • 早期ステートメント提出(early submission)
  • 会合時間の上限(13時間以内)
  • 並行会合の抑制
  • decision-tracking toolの整備

特に注目されるのは、COP本会合での「first reading」を避け、補助機関から上がってきた決定案を、COPで改めて読み上げない方向性が示されている点です。これは、COPの時間を「読み上げ」から「交渉」に戻すための改革であり、今後のCBD運営の転換点になり得ます。

事務局の運営改善:外部レビューが示す「限界状態」と構造改革案

同じく2日目には、CBD事務局の運営改善(External functional review)も議題となりました。
UNDPの外部レビューは、CBD事務局がKM-GBF実施を回すために、構造的に限界状態にあることを、公式文書として明確に示しています。

レビューの特徴は、単なる「効率化」ではなく、以下のような踏み込んだ改革案が提示されている点です。

  • 組織構造の再編(3ディビジョンへの再編・横断ユニット(会合支援、運営支援、IT/デジタル変革導入)
  • 成果ベース予算(RBB)の本格化
  • 権限委譲(CBD事務局の調達権限が10,000ドルで、それ以上の額には複雑なプロセスが発生し事務局が疲弊する等)の課題
  • デジタル変革の独立柱化

この議題はSBI6では「方向性の確認」までに留まり、実際の政治交渉はCOP17での予算・増員議論に移る可能性が高いと考えられます。

おわりに:あらためて条約の実施に関する補助機関(SBI)とは?

SBI6の2日目を終え、交渉の焦点が出そろった様子を合わせてみると、SBIは

  • 資金
  • 報告
  • 権利・包摂
  • 能力
  • 国際制度間関係
  • 事務局運営

という複数の横断的かつ重要なテーマを協議する場が明らかになったのではないかと思います。そして、それを回すために、会議運営や事務局機能そのものの改善が不可避になっている、という現実も改めて確認されました。

3日目以降、協議が本格化する中で、コンタクトグループでの議論がどこまで収束したか、またCRP文書がどの程度固まり始めたかを中心に、SBI6後半の動きを報告したいと思います。

国際自然保護連合日本委員会 道家哲平