
第5回生物圏保護区(BR:ユネスコエコパーク)世界大会が中国・杭州にて9.22-9.26開催されました。
会議の最終日は、杭州が生物圏保護区の保護と持続可能な開発において成し遂げた取り組みの実態を見学するため、「天目山-清凉峰生物圏保護区」 に赴きました。
天目山保護区は、1996年にユネスコの「世界生物圏保護区」に登録された、中国を代表する自然保護区の一つです。杭州市から西へ約230kmに位置し、「大樹の王国」 とも称されるように、世界最古とされる野生の銀杏群落や、世界有数の高さを誇る金銭松など、貴重な植物の宝庫です。また、華南梅花鹿などの稀少動物の生息地としても知られ、豊かな生物多様性を有しています。
MABプログラムの核心である「人間と生物圏の共生」を体現する山麓の集落を見学しました。住民は、地元産のナッツや米酒、トウモロコシ饅頭など、多様で味わい深い農産品を開発。これらの特産品は都市部の観光客に人気を博し、相当な経済収益を上げつつも、自然環境への過度な負荷を避ける持続可能な地域経済モデルとして成功を収めており、保護と開発の理想的な均衡がここに達成されています。
また、保護区の核心地域である「大樹王景区」を見学しました。ここは「大樹華蓋」で知られ、世界有数の巨大なリュウキュウスギ(柳杉)群落が生育しています。中でも、清代の乾隆帝によって命名された「大樹王」は、樹齢2,000余年、胸高直径2メートル以上を誇り、その威容は「大自然が育んだ生きた遺産」と言えるものです。残念ながらこの「大樹王」は20世紀30年代に枯死してしまいましたが、今もなお枯木として聳え立つ姿は、生命の力強さと環境保護の重要性を静かに伝えています。現在はその近くに立つ141号柳杉が「新・大樹王」として公認され、息吹を受け継いでいます。この景区には、樹齢500年以上の古木が500本以上も集中していることから、保護区全体が「生物の遺伝子バンク」としての役割を果たし、厳格な保護管理下に置かれていることを実感しました。
筑波大学大学院/IUCN-Jインターン
翁 杰瑞翌