SBSTTA27の議題5:生物多様性と気候変動について、1日目の午後3時から午後6時のセッションで議論が交わされる予定です。今回は当議題について簡単にレポートします。

 

概要

昆明・モントリオール世界生物多様性枠組(KMGBF)のターゲット8および11の達成に向け、COP16の要請を受けて事務局が行った関連活動の報告と、それに基づくCOP17への勧告案策定が行われる予定です。

ターゲット8:

自然を活用した解決策(NbS:Nature based Solutions)/ 生態系を活用したアプローチ(EbA:Ecosystem based Approach)等を通じた、気候変動による生物多様性への影響の最小化

ターゲット11:

NbS / EbA を通じた、自然がひとにもたらすもの(NCP:Nature Contributions to People、きれいな水やエネルギーなど)の回復、維持、強化

 

詳細

COP16がCBD事務局に要請したことは以下の2点です。

(1)EbAガイドラインの補足文書の作成

(2)リオ三条約間の政策一貫性の強化と協力推進 

リオ三条約: 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、生物多様性条約(CBD)、国連砂漠化対処条約(UNCCD)の三つの総称

 

(1)への対応

2025年3月のオンライン協議と5月の技術ワークショップを経て、新たなガイドラインの草案が作成されました。草案では、気候変動適応と防災が中心であった既存のものに、気候変動の緩和:温室効果ガス(GHG)の排出削減・吸収に関する文章が追加されています。

(2)への対応

一貫性および協力性を強化するための意見が各国政府やオブザーバーから集められ、カテゴリーごとにまとめられました。具体的には、事務局が締約国に対して作成を命じている幾つかの国家戦略(※)の内容調整や、各種報告(PMRR:Planning, Monitoring, Reporting, and Review)の手法合理化などが挙げられています。

(※)の例

・生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAPs:Natonal Biodiversity Strategies and  Action Plans)

・気候変動に関する国家適応計画(NAP:National Adoptation Plan)

 

当日は、これらをもとにCBDが作成したCOP17への勧告案について、各ステークホルダーから意見が寄せられる見込みです。

 

個人的見解

「気候変動の影響で生物多様性が失われている」という文脈は頻繁に目にしますが、「生物多様性が気候変動の影響を抑制する」という、いわゆるNbSやEbSの概念は、未だ社会に浸透していないように感じます。この考え方を広く普及させるためにも、EbAガイドラインの改訂と各機関間の連携強化は必須です。CBDの提案の中で、各ステークホルダーがどのポイントに着目するか、注目です。

 

筑波大学大学院/IUCN-Jインターン
福井涼士