SBSTTA27の議題8:侵略的外来種について、2日目の午前10時から午後1時のセッションで議論が交わされる予定です。今回は当議題について簡単にレポートします。

 

概要

昆明・モントリオール世界生物多様性枠組のターゲット6「侵略的外来種対策」の実施に向け、COP16の要請を受けて事務局が行った関連活動の報告と、それに基づく今後の計画策定が行われる予定です。

 

活動報告

COP16では、侵略的外来種対策に向けて、(1)関係機関との連携強化および(2)公開オンラインフォーラムの開催が事務局に要請されました。本議論では、上記二項目の進捗報告が行われます。


  • 関係機関との連携強化

 2025年4月に開催された第14回機関間連絡グループ会合(Inter-Agency Liaison Group)の内容が報告される見込みです。


  • 情報交換のための公開オンラインフォーラムの開催

 2025年4月に開催されたオンラインフォーラムの内容が統合的に報告される予定です。フォーラムでは、侵略的外来種対策のためのツールや課題、成功事例に加え、生物学的侵略に対しどのように協力的アプローチをとっていくか、またこれらが「ワンヘルス・アプローチ(※)」にどのように統合されるか等が議論されました。

 

(※)ワンヘルス・アプローチ:
ヒト、動物、環境の健康や健全性に関する分野横断的な課題に対して、関係者が協力し解決に取り組むこと。(参考:厚生労働省 https://x.gd/qQnC1

 

計画策定

進捗報告をもとに、締約国およびに対して以下のような奨励案が作成されています。これらの妥当性について議論が交わされる予定です。

 

  1. 締約国への奨励
    1. 侵略的外来種の影響、侵入経路、発生状況および管理措置に関するデータ収集と利用可能性の改善
    2. 外来種課題に対処するため、関連分野を統合した協力的アプローチの活用の検討

 

  1. 事務局への奨励
    1. 関連機関との連携の継続
      1. 関連機関が分野横断的協力を推進するためのガイドライン作成
      2. 外来種の早期発見・対応を可能にするための戦略検討
    2. 生物多様性条約のウェブサイトにある侵略的外来種ポータルの継続的改善

 

個人的見解

外来種の主要な侵入経路の一つに、国際貿易に伴う貨物移動が挙げられます。そのため、効果的な対策には水際での規制強化が不可欠です。しかし、貿易規制は物流コストの増加などを通じ、私たちの生活や経済に短期的かつ直接的な影響を与えます。一方、外来種による生態系の破壊は、長期的には社会基盤そのものを揺るがしかねない深刻な問題ですが、その影響はすぐには実感しにくいです。このように、短期的な経済的利益と長期的な環境保全が衝突するため、規制強化には強い反発が予想されます。この難しい舵取りの中、生物多様性保全の専門機関が、経済への影響を考慮しつつ、いかに実効性のある対策を提案できるか、その手腕が問われます。

 

著者紹介

筑波大学大学院一年の福井涼士と申します。

この度、IUCN-Jのインターン生として、SBSTTA27(生物多様性条約科学技術助言補助機関会合)へ参加いたします。

会議期間を通じ、世界の自然保護を牽引する専門家の方々が、現在の環境保全の課題や展望をどのように捉えているのか、その知見を皆様に分かりやすくお届けしたいと考えております。

また、この貴重な経験で得た情報を基に、一般市民である私たちが自然保護に貢献する方法、そして日々の生活の中で一人ひとりが取り組める具体的なアクションについて考察し、発信していく所存です。

 

筑波大学大学院/IUCN-Jインターン
福井涼士