Rootsの杉山さんからも紹介があったアブダビの Jubail Mangrove Park を一緒に訪れました。
砂漠のイメージが強い中東ですが、これほど豊かな沿岸湿地があることを知って、この機会に必ず自分の目で確かめたいと強く思っていた場所です。

早朝に公園内の木道を歩くと、明るい灰色の干潟の上にマングローブがびっしりと生い茂っていました。ここでは、ペルシア湾の厳しい環境に高い適応力を持つ 「ヒルギダマシ(Grey Mangrove, Avicennia marina)」 が密集しており、東アジアでは見られない野鳥や魚、カニなど、多様な生きものの姿を確認することができました。

 

アブダビの沿岸域には、現在ほぼすべてのエリアにマングローブ林が広がっています。その背景には、1970年代から続く政府主導の自然再生事業があります。

 

アブダビ・マングローブ・イニシアティブ


UNFCCC COP26 の場で、UAEは「2030年までに1億本のマングローブを植える」と国際的に公約しており、これを実現するために、民間技術と協働しながら 衛星・ドローン・AI 技術を活用した取り組みを加速させています。

IUCN Congress の会場では、UAEパビリオンやアブダビ環境庁(EAD)の展示ブースにおいて、マングローブ再生の取り組みが紹介されていました。特に印象的だったのは、AIを搭載した自律走行車両やドローン の実機展示です。思っていたよりもずっと大きく、上部のバスケットのような部分にマングローブの種子を入れ、上空から散布していくとのことでした。

 

ドローンは、次のような目的で活用されているそうです。

  1. 再生事業候補地の環境評価
  2. 自然の分布パターンを模倣した適地への播種
  3. 成長・健康状態のモニタリングによる長期的成果の検証

 

EAD展示ブースでお会いした アブドラ・ムヒディーン氏によると、これまでの広範なマングローブの保全・再生をさらに加速させるため、EADは先端技術研究委員会(ATRC)と連携し、IUCN Congress期間中に 「Nature x Abu Dhabi」 という新しいイニシアチブを立ち上げたそうです。また、UAE国内にとどまらず、IUCN、Wetlands International、WWF などの団体が推進しているGlobal Mangrove Alliance などの国際的パートナーシップを通じて、ペルシア湾を越えた広域的な沿岸湿地の再生と管理にも積極的に協力しています。

 

Global Mangrove Alliance

WIネットワークの一員としてGMAの活動は知っていましたが、UAEのナショナルパートナーの具体的な取り組みや、実際にマングローブが再生される現場を目の当たりにすることで、その重要性と現場感を改めて実感できた貴重な体験でした。

 

日本国際湿地保全連合 朴 惠眞