Nature-based Solutions(NbS:自然に根ざした解決策)の世界標準(Global Standard)の更新がハイレベルセッションで正式に発表された10日午前、改訂版のNbS世界基準の詳細が初めて公開される Learning Zone: Toolbox セッション が開催され、事前登録のうえ参加しました。
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セッションには、改訂作業を主導した IUCN生態系管理委員会(CEM)委員長アンジェラ・アンドラーデ氏をはじめ、CEMメンバー全員が登壇。昨年12月から本年9月まで約10か月にわたる改訂プロセス、改訂ポイント、具体的なCriteria・Indicatorの変更内容について、1時間半にわたり詳細に説明が行われました。

 

改訂にあたっては、一般・専門家を対象とした525件のアンケート調査 と 80回の専門家インタビュー により、2,000件以上のコメントやフィードバック が分析され、繰り返し指摘された主な意見は以下の通りです。

  • 新しい目的への対応:NbS実施の影響評価、政策レビュー・策定、投資判断への活用
  • 明確でシンプルな定義の不足
  • ガイダンス・具体例・ツールや手法の不足
  • 普及の遅れ:認知度不足、政策・制度への統合不足、資金・助成との連携不足、明確なインセンティブの欠如

 

この意見を受け、改訂の方向性として次の提案が示されました。

  • 簡素化・使いやすさ・アクセスの向上
  • 用語の明瞭化
  • ガイダンスと実践的事例の充実
  • 解釈ガイダンス文書の作成
  • 品質管理メカニズムの導入
  • 科学的根拠を整理した参考文書の作成

 

さらに、8つのCriteria、27個のIndicatorの改訂内容が、改訂前のバージョンと比較して詳わしく紹介されました。特にCriteria 3と5は大幅に改訂され、Criteria 6では「Trade-off」という単語が、英語以外の言語で別の意味として受け取られることが多く、そのため修正が行われたとのことです。

最後の30分間は、6つの円卓テーブルごとに異なるケーススタディ資料が配布され、2分間で内容を確認した後、改訂版NbS-GSを適用した Self-assessment Tool(SAT) を用いたワークショップが実施されました。私のテーブルでは、フィリピンの レイクセブ流域における統合型流域・水安全保障プログラム(2016-2025) のケースが与えられ、各指標に対応する質問に対して Strong / Adequate / Partial / Insufficient の4段階で評価を行い、各Criteriaごとの評価値やプロジェクト全体のNbS-GS適合度を算出しました。

4段階評価自体は簡単に見えましたが、実際には各項目ごとに十分な エビデンスの記録が求められる点が印象的でした。プロジェクト完了後ではなく 進行中にこの評価を行うことで、方向性を調整するための基準として活用できると感じました。

 

今回のセッションで使用されたSATは、トレーニング用にExcelで提供されましたが、iNbS Platform 上でもオンラインで利用可能であり、近い将来には更新版NbS-GSが適用される予定です。
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日本国際湿地保全連合 朴 惠眞