あけましておめでとうございます。2026年の年頭にあたり、日頃より国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)の活動にご理解とご支援を賜っている皆さまに、心より御礼申し上げます。

2025年:ネイチャーポジティブの「社会実装」が具体化した年

2025年は、ネイチャーポジティブを社会に実装していくための具体的なアクションが、セクター別・テーマ別に提示された年であったと言えます。

IUCN世界自然保護会議では、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実装を加速するための多様な提言と実践事例が共有され、自然保護と社会経済の統合が強く打ち出されました
また、UNFCCC COP30を前後して、気候変動・自然と経済を結びつける民間主導の議論を加速させる動きが数々発表されました。

企業・金融分野においては、

など、民間セクターからネイチャーポジティブを具体化するための「道具立て」や「共通言語」が次々と提示されました。

2025年は、ネイチャーポジティブが理念やスローガンの段階を越え、実装フェーズに入ったことを世界が共有した年であったと言えるでしょう。

2026年:分断を越え、統合されたアクションへ

一方で、国際政治の不透明化が進む中、国際協定を軸とした合意形成は必ずしも順調とは言えません。国連海洋法条約の補強として交渉されていた公海の生物多様性協定(BBNJ協定)は2025年にようやく合意に至りましたが、海洋汚染防止に関する国際条約交渉は妥結できず、2026年の再交渉会合の日程も依然として不確実な状況にあります。

こうした中で、政府間交渉の進展を待つだけでは、2030年のネイチャーポジティブ目標に間に合わないという認識は、国際社会で共有されつつあります。だからこそ2026年は、2025年に示された民間・自治体・市民社会による多様な取組を「統合し、束ね、社会全体の動きへと高めていく年」となります。

本年10月19日から2週間、アルメニアの首都エレバンで開催される生物多様性条約第17回締約国会議(CBD‐COP17)においてGBFの中間評価が予定されています。この場で問われるのは各国のネイチャーポジティブに向けた本気度と実現に向けた具体策になりますが、各国政府の前向きな交渉を後押しするのは、社会の現場でどこまで変化が起きているのか、起こそうとしているのかという声になるのではと考えています。

公表されたCOP17のロゴ

日本開催のグローバル・ネイチャーポジティブ・サミットの意義

こうした文脈の中で、2026年7月に日本で開催されるグローバル・ネイチャーポジティブ・サミットは、ますます重要度が上がっている来ていることを感じます。このサミットは、

  • 民間・自治体・研究機関・市民社会が担ってきた実践を結びつけ、さらなる一歩への課題を明らかにし、
  • セクターやテーマを越えた協働の可能性を可視化し、ネイチャーポジティブを社会の「当たり前」にしていくための共通の方向性を示し、
  • COP17に向けた世界へのメッセージを発信するための国際的な結節点となること

を目指しています。2月頃には現在のウェブサイトを更新し、暫定プログラムの公開、キースピーカの紹介、参加方法や登録の開始等を始めていく予定です。

IUCN-J自身も変革を進める年として

2026年は、ネイチャーポジティブの社会実装が次の段階へ進む年であると同時に、IUCN-J自身にとっても、大きな変革と成長に踏み出す年となります。

7月に日本で開催されるグローバル・ネイチャーポジティブ・サミットに向けて、プログラムづくりや準備に向けた議論が本格化する中で、私たちは、企業、自治体、研究者、市民社会、地域の実践者など、多様な主体との対話をこれまで以上に深めていきます。そのプロセス自体が、日本においてネイチャーポジティブをどのように実装し、どのような協働が有効なのかという知見を蓄積する貴重な機会になると考えています。

IUCN-Jは、単に国際的な議論を紹介する存在にとどまらず、国内での実践と国際的な枠組みを結びつけ、学びを循環させ、次の行動につなげる「プラットフォーム」としての役割を一層強化していくこと、また、こうした取組を通じて、会員の皆さまやサポーターの方々との関係を深めるとともに、次の時代を担う将来世代の参画を積極的に促し、より多様で開かれたコミュニティとしてIUCN-Jが成長していくための基盤づくりにも力を注いでいくことが、重要であると、2026年の年頭にあたって、感じています。

国際政治の不確実性が高まり、国際協定の進展が必ずしも見通せない時代において、ネイチャーポジティブは、誰かが決めた目標を待つものではなく、社会の中で主体的に動く人々の連なりによって形づくられていく変革のプロセスです。IUCN-Jは、その変革をともに考え、ともに進める場であり続けたいと考えています。

2026年が、ネイチャーポジティブの理念が日本社会の中により深く根づき、次の世代へと確かな道筋が示される年となるよう、IUCN-J会長として、皆さまとともに挑戦を続けてまいります。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

国際自然保護連合日本委員会 会長 道家哲平