IUCN世界自然保護会議(Congress)にあわせて開催された、IUCNの国内委員会・地域委員会の会合では、各国・各地域の委員会がこれまでの活動を振り返り、今後の方向性について意見を交わしました。テーマは「つながり」「明確性」「資源」。IUCNという大きなネットワークの中で、委員会がどのように役割を果たし、互いに支え合うかが中心的な議題となりました。

冒頭では、これまでの活動を通じて、IUCNを「コミュニティ」として支える強い意志が各地で共有されている一方で、IUCN事務局、会員、専門委員会などの活動との間にはまだ境界があり、役割の明確化や情報共有が十分ではないことが指摘されました。より良い協働と信頼の構築のためには、組織間のコミュニケーションを高めること、そして20年戦略ビジョンの実現に向けて必要な資源を確保することが欠かせない、という共通認識が示されました。

議論の中では、今後の「コミュニケーション戦略」に求められる要素として、わかりやすい言葉づかい、上下双方向の情報の流れ、若者や先住民・地域共同体など多様な声を届ける仕組み、そしてIUCN理事との相互的な関係づくりが挙げられました。情報の届きやすさや言葉の壁への配慮も、国際的ネットワークにおいては重要な課題とされています。

また、民間企業、大学、政府、そしてIUCN事務局といった「第三者」の関与が、委員会活動の新たな可能性を広げる鍵になるとの指摘もありました。とくに、政府や民間による資金や能力面での支援が、地域委員会の力を高めるうえで重要とされています。

一方で、委員会が直面する最大の課題として挙げられたのは、「資金とリソースの不足」「運営能力の限界」「情報へのアクセスや明確さの欠如」。こうした現実を踏まえ、委員会間での協働や外部パートナーとの連携をどう強化していくかが、今後の焦点となります。

これまでに32回の会合を重ね、シビックスペース・タスクフォースの設立や、20年戦略ビジョンへの貢献、理事会との協働、運用ガイドラインへの提案など、委員会ネットワークは着実に成果を積み重ねてきました。今後は、これらの基盤の上に立ち、情報共有と協働の質をさらに高め、IUCN全体としてのシナジーを生み出していくことが期待されています。

国際自然保護連合日本委員会 道家哲平