レッドリスト

 

レッドリスト 2006 発表

世界的な絶滅危惧種の状況

レッドリスト2004には15,589種の絶滅危惧種が記載されている。脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類を含む非常に幅広い分類群からなる種が記載されている。しかし、世界の190万種の既知種のうち3%以下しか科学的データがなく、この15,589という数字は絶滅危惧種総数の最も低い値といえる。


生物のグループごとにみていくと、絶滅危惧種の割合は、12%から52%までの幅がある。レッドリスト2004によると、鳥類の12%、哺乳類の23%、両生類の32%が絶滅危惧種とされている。は虫類はまだ完全には評価が終わっていないが、カメ類は42%近くが絶滅危惧種とみられている。魚類もまだ不十分なデータしかないが、大まかにいって3分の1のサメ・エイ類の評価が終わり、このグループの18%が危惧種となっている。淡水魚に関する地域の事例によると、これらの種は他の海洋生物種よりも絶滅の危機にあるようだ。例えば、東アフリカでは、淡水魚の27%が絶滅危惧種にリストされている。植物についていうと、ソテツと針葉樹だけがすべて完全に評価されているが、それぞれ25%、52%が絶滅危惧種となっている。


最初の完全な両生類の評価は、この分類群が最も絶滅の危機にある脊椎動物であることを明らかにした。両生類が、評価の行われた他の脊椎動物よりも絶滅の恐れがあるというだけではなく、非常に高い割合で絶滅のふちにいることもわかった。両生類のうち21%が絶滅危惧Ⅰa類と絶滅危惧Ⅰb類に分類され、非常に高い値となっている(比較してみると、哺乳類は10%、鳥類5%となっている)。両生類のうち23%が未だ科学的データが手に入っていないことから、この高い水準の数値もおそらく過小の評価と思われる。科学的データのないほとんど知られていない種は、しばしば、滅多にみられないものか非常に限られた生息範囲である。


絶滅危惧種の状況についての私たちの知識には大きなギャップがある。脊椎動物の状況は比較的よくわかっているのに対し(だいたい40%が評価されている)、陸域生態系でない生態系(淡水・海洋)や種が多く多様性の高い地域(例えば、熱帯林や深海)や無脊椎動物、植物、菌類といった多様な種の属する分類群(またこれらは生物種全体の大部分を占める)についてはほとんどわかっていない。


絶滅危惧種は、目や科に関係なくランダムに分布している訳ではない。少ないものもあるが、特定の科が平均的な数よりずっと多くの絶滅危惧種が属している場合がある。「生命の系統樹」に関係なく、絶滅危惧種の分布がランダムでないということは、ある進化の家系が非常に早く絶滅へと向かうということだ。例えば、鳥類でみるとアホウドリ、ツル、オウム、キジ、ハトが他の科よりも多く絶滅危惧種がいる。哺乳類についていうと、有蹄類、肉食動物、霊長類、ジュゴンとマナティーが特に危険である。両生類では、サンショウウオ、true toadsヒキガエル類、アジアツリーフロッグ、カメルーンのストリームフロッグ、アメリカの熱帯性のカエルが平均よりも絶滅危惧種が多い科となっている。


近年の絶滅について


種の状態を知れば知るほど、レッドリストへの登録数が増えていく。IUCNのレッドリストは、1500年から現在まで784種が絶滅種として、60種が野生絶滅種として記載されている。過去20年にわたって、27の種が絶滅種・野生絶滅種に登録された。この数は、種の大部分が記述されていないこと、多くの既知種が包括的には評価されていないことから、過去に起こった絶滅種数の最も少ない値であることは確実で、また、種の絶滅が数年から数十年という短期間でも生じることを証明している。


近年の絶滅の割合は、過去に記録されている絶滅の割合を遥かに超えている。知られている鳥類や哺乳類、両生類の過去100年にわたっておこった絶滅の確率は、現在の絶滅のスピードが過去の記録にある絶滅のスピードの50倍から500倍もの早さで進んでいることがわかる。もし絶滅した可能性のある種を加えると、自然の絶滅のスピードの100倍から1000倍にまで上る。これは極端に控えめな試算である。というのも記録のない絶滅を全く考慮していないからだ。この試算は非常に控えめなものだが、現在の絶滅のスピードは、少なくとも過去の割合を2倍から4倍のオーダーとなっている。


絶滅が、大陸でも起きるようになっている。1500年以降の絶滅の大部分がオセアニアの島嶼で起こっているが、大陸の絶滅も現在は島嶼の絶滅とほぼ同じ程度になっている。近年の絶滅の評価は、だいたい過去20年間に起こった絶滅の半分が、大陸で起こったものであることを示している。この傾向は、多くの陸域の絶滅危惧種が大陸のものであるという事実からもわかる。


絶滅危惧種の傾向


レッドリストインデックス(Red List Indices)は、鳥類と両生類の状況が悪化し続けていることを示している。レッドリストインデックス(RLI)は、新しく開発された指標で、特定のグループの保全状況を何回か比較することによって、絶滅危機度の傾向を計るものである。鳥類のRLIを見てみると、鳥類の全種評価をはじめて行った1988年以降、一定的な減少傾向のあるのが分かる。両生類の予備的調査によると、1980年以降同様の減少傾向が見られる。しかし、絶滅に近い両生類の種は、より急激な減少傾向である。

他の分類群については、限られた情報ではあるが、広く減少傾向が見られる。260種のソテツ類(既知のソテツ類は288種)については個体数の変化がわかっており、79.6%(207種)は減少、20.4%(53種)は変化なし、その他判断不能で、増加傾向にあるものはひとつもないと見られている。

レッドリストの地理的状況


絶滅危惧種のほとんどは熱帯地域、特に、熱帯の山岳や島嶼に見られる。絶滅危惧鳥類、哺乳類、両生類のほとんどは熱帯地域(中央・南アメリカ、アフリカ南部のサハラ、南・東南アジアの熱帯地域)に生息している。これらの地域は、熱帯性・亜熱帯性の湿潤広葉樹が優占しており、地球上の陸性・淡水性の生物種のほとんどが生息していると信じられている。それゆえ、哺乳類・鳥類・両生類に見られるこのパターンから、多くの陸性生物種の状態もほぼ同じであると思われる。


海洋生物種の分布はほとんど分かっていない。海洋生物種のうち限られたものしか評価されておらず、これまで分かっている中では、絶滅のおそれのある海洋哺乳類は北太平洋に集中し、絶滅のおそれのある海鳥や軟骨魚(サメ、エイ類)やタツノオトシゴ類(2種除いてすべて評価済み)はインド洋、南西、中西部の太平洋に集中している。
絶滅危惧種の分布に偏りがあるということは、国ごとの絶滅危機種数にも大きく偏りがあることを意味している。絶滅危惧種や絶滅危惧固有種を多く有する国は、熱帯地域に存在することが多く、国内生物種に占める絶滅危惧種の割合の高い国はほとんどが熱帯の島嶼国である。絶滅危惧種・絶滅危惧固有種の多い国は、オーストラリア、ブラジル、中国、インドネシア、メキシコとなっている。特に絶滅危惧種の多い国(領地)は、コロンビア、インド、ニューカレドニア、ペルー、南アフリカ、ヴェトナム(これらの国は、少なくとも1つの分類群で、絶滅危惧種数の多い国の上位3カ国に入っている)。また、コロンビア、インド、マレーシア、ミャンマー、ニューカレドニア、パプアニューギニア、フィリピン、南アフリカ、アメリカは、少なくとも1つの分類群について、絶滅危惧固有種の多い上位3カ国に入っている。複数の分類群で国内種に占める絶滅危惧種の割合の特に高いくには、マダガスカル、サントメ・プリンシペ、セーシェル諸島である


絶滅危惧種の分布のパターンは、分類群の分析と比較的一致する。特定の分類群が生態学的に生息範囲が限られていることによって(鳥類は、両生類より塩水を越えて散在できる)、分類ごとに分布範囲/サイズ(例えば、鳥類は両生類よりずっと大きな生息範囲を持つ傾向があるなど)には違いが生じる。種の多様なグループの評価が進むほど、絶滅危惧種の分布はより多様になると期待されている。例えば、絶滅のおそれのある爬虫類やサボテンのグループは、乾燥地帯の生物多様性の状態がわかる代表的なものとなるだろう。

多くの絶滅要因

生息地の破壊やそれに関連する生息地の質の低下や分断が、陸域生物種の最も大きな危機要因となっている。生息地の喪失は、大きな悪影響となっており、絶滅のおそれのある鳥類の86%、哺乳類の86%、両生類の88%にこの要因が見られている。生息地の喪失は、人類の行動圏の拡大にとどまる兆候のない限り主要な絶滅要因となり続けるだろう。

分類間および分類内でも危機にいたるプロセスは異なる。生息地の破壊は一般的な主要危機要因あるが、鳥類・哺乳類・両生類では特定の危機プロセスが働いていることが分かっている。過剰捕獲は哺乳類の主要危機要因のひとつで、越滅のおそれのある哺乳類のうち33%にこの理由が挙げられている。鳥類にとっては過剰捕獲と外来種が大きな要因となっており、約30%の絶滅のおそれのある鳥類がこの二つの要因が影響している(ただし島嶼における鳥類の絶滅危機理由の67%が外来種によるものとされている)。絶滅のおそれのある両生類について見ると、主要な危機要因はさまざまで、29%が気候変動を含む汚染によるもので、17%が病気の影響を受けている。病気と極端な気候の変化の相互作用が、世界的な両生類の減少を牽引しているという説が有力だ。

海洋・淡水の生態系の危機のプロセスは、十分に理解できていない。生息地の喪失に続いて、過剰捕獲が現在の海洋生物種に対する大きな危機要因と見られている。漁業の際に起こる非意図的な事故(混穫)が、海鳥や海洋哺乳類、他の海洋生物種に与える影響が大きくなっている。汚染や外来種に続き、生息地の喪失が、淡水生物種にとって深刻な危機要因となっているようである。

危機のプロセスは、流動的で、変化するものである。歴史的に見ると、鳥類に対する最も大きな危機要因は、外来生物の導入によるものが1番多く、続いて生息地の喪失・過剰捕獲となっていた。今日では、生息地の喪失が、鳥類の主要危機要因となり、続いて、外来生物の導入、過剰捕獲という順になっている。この順序は、温暖化に関する予測が正しければ、将来変わることだろう。

レッドリストの社会的・経済的文脈

しばしば、人と絶滅危惧種は、同じ地域に集中している。特にアジア地域の大部分(特に中国南東部、インド・ガーツ山地西部、ヒマラヤ、スリランカ、ジャバ(インドネシア)、フィリピン、日本の一部)とアフリカ大陸の一部(中央アフリカのアルバティーン地溝帯、エチオピア高地)。


絶滅危惧種数は人口増加率の高い地域で急速に増加している。カメルーン、コロンビア、インド、マダガスカル、マレーシア、ペルー、フィリピン、ベネズエラといった地域は、将来、絶滅危惧種の需要と急速な人口増加の間で問題が生じると見られている。

人口は少ないが、人口増加率の高い国は、自然保護活動を先行させる絶好の機会だろう。例えば、ボリビア、パプアニューギニア、ナミビア、アンゴラ、北アフリカ諸国などが挙げられる。

絶滅危惧種を多く有する国は、保全活動のために重要な投資の全くできない国である傾向がある。絶滅危惧種の数の高い国で、比較的国民総所得の低い国の例としては、ブラジル、カメルーン、中国、コロンビア、エクアドル、インド、インドネシア、マダガスカル、ペルー、フィリピン、などがある。比較的経済的に強く、かつ、絶滅危惧種の多い国は、アルゼンチン、オーストラリア、マレーシア、メキシコ、アメリカ、ベネズエラである。他の国(特にヨーロッパは財政的には非常に強いのだが、一般的にみて、世界的に絶滅のおそれのある種のいる割合が低い。

自然保護の対応

世界的に絶滅のおそれのある種は、しばしば、その存続のために複数の自然保護活動を組み合わせることが求められる。これらの活動は、研究、種に特化した活動、生息地を対象とした活動、政策的な支援、コミュニケーションや教育などが含まれる。

絶滅危惧種の半数以上が、現状を改善するために、保護活動を実質的に増加する必要がある。多くの種がいくらか自然保護の注意が向けられているが、そうでないものも多い。

種を絶滅から救うこともできるし、救ってきた事例もある。しかし、これには研究や注意深い共同作業、意図的な管理といった活動を組み合わせて行うことが求められる。

自然保護活動の改良は、種の保全に必要な活動についていっそうの理解を得るとともにそれが適用された場合には、種の絶滅を防ぐ努力を行わなければならない。

IUCNレッドリストの情報は、自然保護のツールとして様々に利用可能である。レッドリストは以下のような利用の仕方がある。

特定の種の保全状況についての情報を提供する。
国内法あるいは国際法にて特定の種をリストする際の指針となる。
保護計画や保護活動の優先順位を決める手助けとなる。
保護活動や回復計画の対象となる優先すべき種の特定に役立つ。
教育プログラムのサポートとなる。


 

ニュースリリース レッドリスト2002 /ニュースリリース レッドリスト2003 / ニュースリリース本文(英語 PDFファイル)
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